あなたたちのひとことが

私の道を、定めてくれた。

その言葉があれば、私はここで、生きていける。



The other side of Lens.   - 2 -





その日も、いつものように出社して資料整理をするはずだった。

なのに。


 「「おはよう! 。」」

 
オフィスのあるビルの前に、あの双子が、いた。



彼らの取材をしてから、2週間が経とうとしている。

取材翌日。

私はウィーズリー家の滞在する宿へと掲載新聞と写真を届けに伺った。

しかし、ちょうど一家は外出中。

約束をしてから伺うのが正攻法なのだけれど、私自身、いつ仕事が

入るのか予測不可能なだけに、それはできなかった。

数日あけたものの、やはり外出中で。

昨日、宿のマスターに全てを託していた。


 「このままバイバイ、かなぁ・・・」


そう思いながら、ココアを飲んでいた昨日の夜。

なのに。

出社してみたら彼らの出迎えだなんて。。。


 「ええっと、フレッド君とジョージ君だよね?」

 「「ワぉ! 、名前を覚えていてくれたのかい?」」
 
 「そりゃ、今の私に悪戯したのは、後にも先にもあなたたちぐらいだし。」


ガチャリ。


古めかしいオフィスの鍵を開け、彼らを招き入れる。

到着1時間前から冷房が入るこの部屋は、散らかっているけれど、快適。

彼らは来客用ソファーに腰掛け、なにやらコソコソ話しているけれど。

気にせず冷たいレモネードを用意する。

きっと何の目的というのもないのだろう。

ただ単に、暇つぶし、なんだろうな・・・。


 「写真と新聞は、ご両親も目を通されたのかしら?」

 「「もちろん!」」

 「だからお礼を伝えにきたのさ!」

 「僕らだけのほうが動きやすいだろ?」


いくらオフィスとはいえ、対応できるスペースは限られていて。

たしかに・・・そうかも。


 「そうね、ご家族皆さんでお越しいただいても・・・」


レモネードをテーブルに置くと、ふたりはすかさず一気に飲み干す。

そのシンクロした動きに、思わず笑みがこぼれる。


 「「これ、ウマイ!」」

 「あらあら、ありがとう。」


家に代々伝わる、とっておきのレモネード。

お世辞かもしれないけれど、ちょっと嬉しい。


 「ほんと、こっちにきて正解だな。」

 「買い物なんて、付き合ってられないよ。」


彼らの向かい側に座り、私もレモネードで喉を潤す。

よく見れば、フレッドもジョージもマグルの観光客風な装いで。

ジーンズにTシャツ、だけど中途半端にシャツを入れてみたり。

マグルの格好に慣れた私には、なんだか少し滑稽な姿だけれど。

ふたりの精一杯の努力が伺えて、微笑ましい。


 「いい記念になったかしら。」

 「もちろん! 家族写真なんてあまり撮らない家だからね。」

 「僕らが撮るのは、ミイラとか遺跡とか古代文字とか・・・」


今回の旅行でどんな場所を訪れたのか、なんとなくわかってしまう。

ついつい、風景やそのモノを撮影したくなるのも。


 「一緒に随行できれば、行く先々で家族写真を撮ったのにね。」

 「「う〜〜〜ん。」」


どうしたものかとでも言いたげな、ふたりの表情がちょっと気になる。


 「?? どうしたの?」

 「いやぁ〜、その・・・ウチの兄貴が・・・」

 「お兄さん?」

 「そう、一番上が曲者で。。。」


思わずクスりと笑ってしまう。

私はビルと面識があるということを、彼らは知らない様子で。


 「そうね、彼は紳士だし、魅力的な男性よね。」

 「「っ!?」」

 「そんな、泣きそうな顔をしなくてもいいじゃない。
  何度か仕事でご一緒したから、顔を覚えているだけよ?」


私の言葉に、彼らはなんだかホッとしている。

つい、からかってしまったけれど、その素直なリアクションが可愛くて。

レモネードを飲みながら、ふたりを観察したくなってしまう。


 「ところで、はいつからココにいるの?」


そうたずねてきたのは、右側に座る、少し声の低い彼・・・たぶんジョージ。

ずっと聞きたくて仕方なかったのか、私の答えをまっている。


 「そうね、学校を出てからずっと・・・もうすぐ5年目、かな。」

 「おしい! 僕らと入れ違い。」

 「え・・・」

 「「22歳かぁーーー、お姉様!」」


ああ、年を自分からバラすなんて。まんまと策にハマッてしまった。 

というか、彼らはそうすると・・・もうすぐ5年生?


 「7つも年下だなんて・・・見えないわよ、あなたたち。」

 「「そうかな?」」

 「ええ、7年生かと思ったもの。」


なにやら喜び合うふたりを尻目に、おもわずうなだれる。

こんな年下相手に、ときめいたりからかわれたり。

なにやってんのかな、私・・・。 


 「、この仕事、楽しい?」

 「・・・っえ?」


左側に座る、フレッドと思しき彼からの唐突の質問に、答えに詰まる。

楽しいか・・・なんて。

考えたことなかった。

写真に携わる仕事がしたくて、今の仕事を選んだけれど。

なんだか違和感を感じているのは確かで。

 
 「、君は写真を撮るのが好きなんだろ?」

 「いろんな人の、笑顔を撮るのが好きなんだろ?」


ドクン。

心臓に、彼らの言葉が突き刺さる。


 「そうよ、私は写真を撮るのが好きで・・・。笑顔が欲しくて。
  なのに、ゴシップを追いかける仕事しか就けなくて。
  それさえも満足に出来ない今が、現状が、だいっ嫌いで・・・」


口から、今まで溜め込んでいた自分のオモイが言葉になってあふれる。

瞳から、熱い滴がぽたぽたと、おちる。


こんな、年下の。

生意気な双子に。

自分の心を見透かされるなんて・・・。


 「・・・くやしい。」

 「「っ?!」」

 「あなたたちに、自分の目指す道を諭されるなんて。」


涙をぬぐいながら、不出来な笑顔で答えるのが、精一杯。


 「、写真館とか、ひらいてみたいと思わない?」

 「そうそう!ダイアゴン横丁90番地なんて、どうだい?」

 「えっ?」

 「たしか90番地は空いていたから。」

 「ああ、写真館もあたりにないしね。」


ふたりがダイアゴン横丁の不動産情報に詳しいことに少々驚きつつも、

私がやりたかったことが、明確に見えてきたようなカンジがして。


 「その話、のった!!」


おもわず大乗り気で返事をする、私が、いた。




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あとがき

さんは、パーシーよりも年上で、チャーリーと重なる時期はあったけれど
お互い覚えていなかった、みたいな。
ほら、卒業後にあまりにも変わりすぎて、「ど、どちら様?」な状況になること、
ありませんか??? ええ、すべて言い訳です。スミマセン、スミマセン。

夢是美的管理人nao