制服から私服へ、着替えられない私がいる。

2人に、ホグワーツの制服のままで会いたかったから。



Photo is Love - Story 6 -




初夏の日差しがまぶしい。

半年ぶりに、9と3/4番線に降り立つ。

1年生から6年生までが、順に壁の向こうへと吸い込まれていく。
ほとんどの生徒はローブを脱ぎ、制服から私服へと着替えていた。

私たち卒業生は、そのほとんどが制服姿のままで。
別れを惜しみながら、ホームにたたずんでいた。

7年前とかわらない、真っ赤なホグワーツ特急。
これに乗って、友人と共に学校へ向かうことはもう、ない。

 「、お店に遊びに行くからね!」
 「私も試合、見に行くからね!」

アンジェリーナとも、いままでのように簡単にあえなくなるだけに、
別れがつらい。

こみ上げる涙をぬぐいつつ、顔をあげると、ホーム中央にある柱が視界に入った。
ホグワーツ特急の吹き出す蒸気の向こう側に、ひょこっと現れた二つの影。
見慣れた赤毛が2つ、そこにあった。

ドラゴンのジャケットを小脇に抱え、濃緋のサマーセーターを着たフレッドと、
濃紺のサマーセーターを着たジョージ。
私がいることを確認すると、ふたりはお日様のような笑顔をみせてくれた。

 「「!!」」

すぐそこに、会いたくてしかたのなかったフレッドが、ジョージが。

大きく腕を広げ微笑んでいるというのに、その風景が、涙で滲んでしまう。

涙があふれる瞳をそのままに、ふたりの胸に向かってたまらず飛び込んだ。

 「「卒業、おめでとう!」」

久しぶりのステレオ音声。
左右から抱きしめられて感じる、ふたりのぬくもり。

 「ひっっぐ。。。っあぁりがとぉうぅ〜〜〜〜っ!」

言葉にならない。

ジョージが、優しく頭をなでてくれる。
フレッドが、そっと涙をぬぐってくれる。

会いたかった。

すっごく。

この日をどんなに待っていたか。

2人に包まれて、やっと卒業できたって、実感した。

 「!笑って!!」

振り返ると、カメラを構える、リーがいた。
その傍らにはアンジェリーナ。

大好きな2人に再会できた喜び。
きっと私は最高の笑顔だったと思う。

と、そのとき。
リーがニヤリと笑った。

瞬間、右側の視界が真っ赤になり、唇にやわらかい感触が伝わる。

離れたと思ったら、今度は左側の視界が真っ赤になって・・・。

同じようにやわらかい感触が、唇に伝わる。

 「・・・!?」

耳まで真っ赤になった私に、


 「「「サイコーの卒業写真のできあがり!!!」」」


悪戯3人組の声が聞こえた。

学生時代は終わったけれど、私たちには楽しい未来が待っている!

そう。

この先、このアルバムに収められるであろう、3人の幸せが。

制服に身を包んだ私に、キスの雨を降らせる私服の双子。

くすぐったいけれど、最高の卒業写真。

私の元気の素だったアルバムの8ページ目に、この写真はキッチリと収められた。



* * *



 「じりりりりっりりり・・・りっ!」

けたたましい目覚ましが鳴り響く。
ダイアゴン横丁93番地の2階。

 「う〜ん、アンジェーうるさぁい・・・」

 「う〜ん、ジョージうるさぁ〜い」
 「う〜ん、フレッドうるさぁ〜い」

変な声色のステレオ音声、一気に目が覚めた。
ベッドから跳ね起きると、両脇にはすっかり着替えたフレッドとジョージ。

 「お。目が覚めたぞジョージ」
 「やっとだな、フレッド」
 「「おはよう、!」」

 「お、おはようフレッド、おはようジョージ。」

どう考えても寝顔を絶対見られていたことに、恥ずかしさを隠せない。
ふと時計に目をやると、9時をさしていて。

 「あれ?どうして??」

使い慣れた目覚ましは、6時に鳴るようセットしたはずだったのに。
サイドテーブルに鎮座していた時計を、フレッドがその大きな手に包み込む。

 「ああ、目覚まし時計だろ?6時なんて、早すぎるよ。」

すっくと立ち上がり、ベッド脇の小窓をあけつつ、ジョージが振りかえる。

 「そうそう!昨日の今日だし、にはゆっくり眠って欲しくてね。」

 「「僕らがこっそり変えたのさ!」」

部屋を見渡すと、寝る前までは転がっていたはずのトランクが、お役ご免と
いわんばかりに部屋の片隅にあって。
小窓からは、さわやかな風が部屋をぬける。
大きな窓のそばへ据え付けられたスタンドには、の入った鳥かごがあって。
ベッドを抜け出しワードローブをひらけば、いつもの洋服がきっちりかかっていた。

 「もしかして、その、ふたりが?」
 「ささっとだけどね」
 「そう、ささっとね」

すぐ横にある、ワードローブと同じパイン材でできたベンチチェストをひらけば、
ランジェリーまでって・・・え???

 「あの、これ、みかけないものが・・・」
 「いやー!ジョージのエッチ!」
 「きゃー!フレッドのエッチ!」

 「「でも、、そういうの、イヤかい?」」

顔色一つ変えずに切り返す2人。
薄ピンクに、キレイなブルー、可愛いリボンがちりばめられた見慣れないランジェリーたち。
たしかに私の好みだし、サイズもなぜか合っていて。

 「き、嫌いじゃないけれど・・・」
 「だろ?? 似合うと思ってさ!」
 「卒業祝いというか、入社祝い?」

フレッドもジョージも、なにやら誇らしげに、自信満々に答えてくれた。
これも2人が??? 
とにかく、荷物を片付けてくれたわけだし。

 「ありがとう、でもその・・・着替えたいんだけれど・・・」

お礼を言いつつも、さすがにパジャマ姿が恥ずかしくなってきた。
おまけにランジェリーのプレゼントまで。
さすがにふたりを直視できない。

 「名残惜しいな、の可愛いパジャマ姿!」
 「でもここは我慢だ、相棒。」
 「「、リビングは向いの部屋だから!」」

ふたりは、にこやかに部屋を後にした。

このドキドキ、ふたりに聞こえていませんように!



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あとがき

一部修正中。すっごいケアレスミス連発。舞台設定(?)とか年齢設定とか、
そもそも書き出していた資料が間違えていたし。それに気づかない自分もどうかと。
もう一度「賢者の石」から読み直してきます(落涙)

夢是美的管理人nao