だけど今は、会わない。私たちの、未来のために。
Photo is Love - Story 5 -
双子の逃走劇から一夜明け。
校内は別の意味でにぎやかだった。
ここぞとばかり、たくさんの生徒がなにかしら悪戯をしかけていた。
「こらぁ〜〜〜〜、だぁ〜れだーーーー!」
廊下にはいつもと変わらず、フィルチの声はやっぱり響き渡って。
一瞬、2人がいない現実が嘘に思えてしまう。
生徒の使う悪戯道具は、双子が既に売りつけていた商品も幾つもあったし。
それが、彼らがココにいたという証になっていて、うれしくて。
フレッドから直々の指令(?)をうけたピーブスは、いつも以上に悪戯へ力を入れていた。
でもやっぱりというべきか。
フレッドとジョージのような爽快な悪戯を目にすることはなかった。
いや、私自身がそれどころではなくなってしまっただけかもしれない。
卒業にむけて、その先の道にむけて、自分の未来に向かって準備を
することに急がしくなってしまったから。
リーは一足先にアナウンサーの研修生として、定期的にホグワーツと
魔法省を行き来するようになり、談話室でたまに顔をあわせるくらいで。
私は私で、マクゴナガルの面接では呆れられてしまったとはいえ
「あなたの選んだ道です。がんばりなさい。」
そういいながら、経営に関する参考資料リストを用意してくださるのは、
やっぱり寮監としてのやさしさなのかな?
いくつかは既に取得していたとはいえ、やはりあったほうがよい資格もあって。
間近に迫った試験にむかって、私は机に噛付いた。
フレッドのために。
ジョージのために。
そして、彼らのお店『ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ』のために。
* * *
卒業前の数週間は、本当にめまぐるしい忙しさだった。
資格試験がそれこそ週末ごとにあって。
フレッドもジョージも、ホグワーツのホグズミード行きの日にあわせて
三本の箒やゾンコの店に顔を出してくれていた。
会えるのに・・・。
息抜きのホグズミード行きは、どうにもいけなかった。
会いたい。
フレッドに。
ジョージに。
すごく、会いたい。
ホグズミードで待ち合わせをして、3人でバタービールを飲みたい。
その気持ちをグッと我慢し、ロンにお願いして2人に手紙を届けてもらった。
「、僕はもしかしてふくろう代わりなのかな?」
頬をふくらませながらも、ロンは律儀にふたりからの返事を届けてくれた。
検閲が怖くて、ふくろうが使えないだけに、本当に嬉しい。
「ロン。ありがとう、あなたが頼りなの!」
屋敷しもべから受取ったホットチョコを差し出しながら、お礼を伝える。
ロンは照れながらも、WWWがどれだけ繁盛しているか、
ふたりのエプロン姿が笑えるとか、ちょっと髪を切ったとか、元気そうだとか、
ちょっとしたことを伝えてくれた。
本当に、ロンにはお礼を言い尽くせない。
「、会いに行かないで、その・・・心配じゃないの?」
そんなロンの質問に、私は首を横にふる。
「大丈夫! 私はフレッドもジョージも信じているから。」
やれやれといったロンに、ハリーとハーマイオニーがくすりと笑う。
「「ロンは心配性?」」
「ちょっ、ハリー!ハーマイオニーまで!!僕はただ・・・」
なにやら楽しそうな声を後に、部屋への階段を駆け上がった。
忙しそうにしていたハリーたちの、明るい声を聞くのも久しぶりだけど。
それ以上に、この手紙を早く読みたくて。
焦る気持ちを抑えつつ、部屋に戻って封を開けた。
『 僕らの愛すべき
手紙、しっかりうけとったよ! まずは、WWW社長として。
・ 殿
ウィーズリー・ウィザード・ウィーズの社員として
採用することをここに通知します。
って、ああ〜〜〜!! 硬い文章はココで終わり! 苦手なんだよね、こういうの。
でもマクゴナガルに提出しなくちゃいけないだろ? その・・・正規書類としてさ。
提出用の書類も同封したから、安心おしよ。
店は、好調ってところ。
今まで開発してきた商品が飛ぶように売れるから、嬉しい悲鳴さ!
なにせあっという間に在庫切れ。
生産ピッチが追いつかないよ。
がきてくれたら、安心して商品開発に力が入れられるかな?
売り上げを隠れ穴に送金できるくらいは利益もあげているし。
からの手紙を届けてくれたふくろう、じゃない、
ロニィ坊やには、僕らからもお礼をキッチリ送るつもりさ!
それじゃぁ、残り少ないホグワーツでの生活、楽しんでくれよ!
ありったけの愛を込めてXXX。
F & G
P.S.
の顔が、早く見たい。 の声が、早く聞きたい。 ・・・愛しているよ!! 』
羊皮紙に綴られているのは見慣れた2人の文字だけど、ロンを待たせて書いたのか、
なんだかとっても急いだカンジの走り書き。
でも、愛の詰まったメッセージ。
おもわず手紙を抱きしめてしまった。
「まったく。その笑顔、あのふたりにみせてあげたいわ〜。」
同部屋のアンジェリーナが、ダンベルで筋トレしながら笑ってる。
ウッドと同じ、プロリーグに入ることが決まったアンジェリーナ。
クラブチームでの練習以外、体を鍛えることに徹していた。
「、会いに行かないの?」
汗をぬぐいながら、アンジェリーナが尋ねてきた。
会いたい。
あのお日様のような笑顔を見たい。
あって抱きしめて欲しい。
フレッドの香り、
ジョージの香り、
ふたりの香りに包まれたい。
そして、、、キスしてほしい。
けれど、会わない。
「まずはスキルアップだもの・・・それに。」
「それに?」
「会えない時間が、愛を育てると思うの!」
「はいはい、そうね。はぁ〜、きいて悪かったわ。」
ふたりがくれたアルバムには、愛がいっぱい詰まっている。
それが私の元気の素だから。
私は頑張れる。
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