信じることに怯えたら、全てが偽りに見える。

それはなんて哀しいことだろう。

全てを嘘になんて、僕はしたくない。



Introvert Lovers -06-





個室のシャワールームへ入り、少し熱めの温度設定にして蛇口を捻った。

生温いスコールが、徐々にその温度を上げる。

シャワーを浴びながら、グルグルと考えてしまうことは一つ。

さっきの彼は、本当にフレッド?

もしかして、ジョージ?

だとしたら。

やっぱり私は・・・彼らにとって、ただの暇つぶしのオモチャ?


ターゲットを決めてからかうのは、彼らのお家芸。

トラップを仕掛けて、困った顔をみては大笑い。

悪戯が見つかっては、追いかけられるその姿。

単調なホグワーツでの生活にとって、双子の存在はある意味スパイス。


けれど、私と一緒に過ごしてきたフレッドは、まるでお兄さんだった。

面倒見も良く、校内で見かけるよりも落ち着いていて。

たまにジョークを交えながらも楽しいひとときを過ごさせてくれる。

家のことや家族のことを、よく話してくれるのに。

そんな私が知っていたはずのフレッドは、偽りだったの?


 「嘘よね・・・信じて、いいんだよね?」


自分自身に言い聞かせるようにつぶやいて、蛇口を閉める。

ぽたりぽたりと、まるで涙のように、前髪から滴がこぼれた。



* * *



乾いた髪を整えながら階段を下り、温かな空気に包まれた談話室へ戻ると、

まばらだったはずの人影も既になくて。

いつもの場所へと自然に視線を向けると、そこにはテーブルに突っ伏した

フレッドがいた。

最初は、待ちくたびれて眠っているのかと思ったけれど。

どうにも様子がおかしい。

肩で息をしているというか、、、呼吸が荒い。


 「・・・フレッド?」


声をかけるけれど、腕に顔を埋め、その表情を伺うのは難しい。

そっと前髪をかきあげ、額にあてた手のひらから伝わった体温は、

想像以上に熱いものだった。


 「ちょっ!?」

 「ぁぁ……・・・?」

 「ねぇ、フレッド。あなた、熱が…っ!」


私の声に反応して、ゆっくりと体を起した彼は、ほんの少し前まで

一緒にいた時とはうって変わって、頬は薄紅色に染まり、瞳は甘く

潤んでいた。


 「、に、謝らな、、、く・・・ちゃ。」

 「謝るって。それよりも・・・ねぇ、早く体を休めて、お願い!」


悲鳴にも近い、私の懇願する声が、談話室に響き渡る。

なんとかして、彼を寝かせないと・・・。

けれど哀しいかな、ソファーのある場所へ移動させたくても、

体の大きなフレッドを動かすことなんて、私一人の力では到底

出来るはずなどなかった。


 「どうしよう。。。」

 「ごめん・・・。」


困惑する私の横で、フレッドはただひたすら、謝罪の言葉を口にする。

何のことについて謝っているのか、それ以上を聞きたくても、

熱にうなされたフレッドを問いただすなんて、私には…できない。


 「・・・ゴメン。みて…あげられなくて。」

 「っ!!」


見るからにつらそうな彼が、必死に何を謝っているのか・・・。

理解するのに、さほど時間はかからなかった。

さきほどまでの違和感は、もうない。

もう・・・大丈夫。

ふと、人の気配に振り返ると、そこにはフレッドに良く似た人影。

仄かな明かりに照らされたのは、フレッドと同じ顔。

彼は間違えなく、ジョージ・ウィーズリー。


 「詳しくは、後でいいかな?」


バツが悪そうに顔をだした彼は、座っていることさえやっとな状態の

フレッドの右腕を掴み、ゆっくりと立ち上がらせ、体を支えながら、

そのまま近くのソファーへと移動し、その身を横たわらせた。


 「あ、ちょっと待って。」


私は近くにあったブランケットやひざ掛け、クッションをありったけ

かき集め、フレッドが温かく休めるような環境を整えると、

屋敷しもべ妖精に薬と氷嚢の手配を頼むべく、厨房へと向かった。





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