がむしゃらに頑張る、。
涙を浮かべていた、。
少しでも君の力になりたい、そう思った僕がいた。
Introvert Lovers -02-
「あなたね? アジアの・・・確か日本!」
「・です。」
「私、ハーマイオニー・グレンジャー。よろしくね!」
あれはホグワーツに入学した日。
ルームメイトになったハーマイオニーは、にっこりと右手を差し出した。
戸惑う私は、無言で手を差し出すことしかできなくて。
握手をしながら、興味深げに私の髪を見つめる彼女に、なんと言って
いいのかさえ、わからなかった。
「あの・・・。」
「あなたの髪、まっすぐで、黒くて、綺麗・・・素敵だわ。」
「ええっと・・・ありがとう。」
「私ね、日本の文化にも興味があるの、それでね」
ハーマイオニーの言葉は、すこし早口で、まるで英語の洪水。
私は正直、彼女の会話を半分も理解できていなくて。
ただ、ぼんやりと聞き流してしまっていた。
「・・・で、あの。。。? どうか、したの?」
「ご、ごめんなさい!!」
「!?」
「私、その、、、英会話が苦手で。」
生まれも育ちも日本の私。
都内近郊にあるマンションで、サラリーマンのパパと専業主婦のママ、
そして私。
日本ではよくある核家族、公立小学校に通ってのんびりすごしていた。
けれど転職したパパの、最初の赴任先だったイギリス。
家族で移住したのは良いけれど。
日本人学校に通いはじめて1年数ヵ月後、ホグワーツへの入学許可が届いた。
ヒアリングとちょっとした日常会話がやっとなのに、本当に信じられなくて。
パパもママ大乗り気で、頑張れって送り出してくれた。
一応、一ヶ月間の入学前講習は受けたとは言っても、実は不安でいっぱい。
そんな現状を、筆談を交えながら、知っている単語を一生懸命つなげて、
私はハーマイオニーに伝えた。
「そうだったの・・・」
浅くベッドに腰かけていた彼女は、頷いていたかと思うと、なにか閃いたのか
パッと瞳を見開いて、次の瞬間、笑顔と共に驚くべき言葉を口にした。
「まずは、コミュニケーションね。基礎もあわせて、教えがいありそう!」
「えっ?」
「私にとっても日本語の勉強になりそうだし、がんばりましょ!」
「は・・・ハイ、がんばります!」
かくして、その日の夕食後から、ハーマイオニー先生の英会話教室がはじまった。
談話室の片隅、カフェテーブルに向き合って、一対一の勉強。
けれど、ハーマイオニーは、それはそれは厳しくて。
私は泣きながら勉強するはめになった。
「。あなた本当にイギリスで生活する気持ち、あるの?」
「あるわ! でも、、、」
ヒアリングはほぼ問題ないのに。
ただ、自分の言葉で表現しようとすると、上手く言葉にできなくて。
もちろん単語はちゃんとおぼえているのに、どうしても文章構成能力が
なかなか身につかないことに、苛立ちばかりが募ってしまう。
そんなときだった。
「そんな頭ごなしじゃ」
「覚えるものもおぼえられないぜ?」
「「なぁ、兄弟。」」
声の主は、同じような顔をした、二人の上級生。
半泣きのロンのそばで、肩を組んでニヤニヤしながらコチラを見ている。
私と目が合うと、ふたりそろってウィンクしてきた。
「カッコいい・・・」
つぶやいた私の言葉に、ハーマイオニーは小さく咳払いをひとつ。
そんな私達のやり取りを知ってか知らずか。
ロンのお兄さんたちは、こちらへスタスタとやってきた。
「やぁハーマイオニー。応用は僕らでも十分だと思うんだよね。」
「教科書どおりの言葉も必要だけど、フランクな英語も大切じゃないか?」
「まぁ、そうでしょうけれど。」
「「ということで、。よろしく!」」
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