幸せにするよ。

アイツの分も、アイツ以上に。

を、アイツを好きだったも・・・全部ひっくるめて。。。




Be yourself is all that you can do.

-02-







 「来月から、“僕ら”の店を再開するよ・・・」


ジョージは帰り際にそう言ったけれど。

私は正直、喫茶店を開けようとは思えなかった。

ジョージと一緒に、お店にきてくれたフレッド。

窓越しに、手をふってくれたフレッド。

お店のいたるところに、あなたの香りが残っていそうで。

あまりにも、辛いから。

あなたと出会ったこの町には、あなたとの思い出が多すぎて。

いっそこの町に別れをつげられたらいいのに・・・。

それなのに・・・。


 「店を整理していたら、出てきたんだ・・・・。」


数日後、フラットを訪れたジョージが差し出したのは、小さなジュエリーケース。

中には可愛いゴールドのリングと、書きかけのカードが入っていた。


“ 。いつまでも 君らしく。 笑顔でいてほしいから・・・”


 「これ、フレッドの字・・・あっ!」

 「もう過ぎてしまったけれど、先月、の誕生日だったよね?」


用意されていた指輪の意味を、確認することは、もうできない。

書きかけのカードの、その先の言葉を、知ることはできない。

けれど。


 「私らしく・・・笑顔で・・・。」

 「、もしよかったら、お店を開けたらどうだい?」


フレッドのカードと、ジョージの言葉に後押しされて。

悪戯専門店の再開と時を同じく、私は喫茶店の鍵を、開けた。




* * *




いつもと同じように、あの頃と同じように、彼らのお店へとコーヒーを運ぶ。

喫茶店の鍵を開けたあの日から、3ヶ月。

朝はW.W.W.へコーヒーを届け、昼は戻ってきてくれたお馴染みさんと、

世間話をしながら過ごし、店が終われば、ジョージが顔を出してくれる。

平和だったあの頃と、同じ毎日。

悲しいかな、フレッドを探してしまう癖は、なかなか抜けない。

でも、それもあと少し。

私は、ジョージに“あのこと”を話さなくちゃいけないから・・・。

大切な、大切な話。


 「ジョージ。今までありがとう。もう少ししたら、お店を閉めるわ。」

 「? どうして・・・。」

 「あのね、私、フレッドの子供を、育てていきたいの。」

 「!?」


ダイニングテーブルの向い側に座るジョージが、ガタンと派手な音をたてて

マグカップをテーブルに戻した。

彼は目を見開いて、私のお腹に視線を落とした。


 「フレッドはもう、いないけれど。彼の子供は、ココに、いるの」


私はそっと、お腹をふれる。

5ヶ月に入ったけれど、胎動はまだない。

でも間違いなく、フレッドのあかちゃんが、私の中にいる。


 「。」

 「なあに?」

 「僕も・・・一緒に、その、育てていくのはダメかい?」


唐突な、ジョージからの提案。

ひとりで子供をそだてることに、不安がないといったら嘘になる。

それだけに、ジョージの言葉に、胸があたたかくなった。


 「でも。。。私・・・。」

 「フレッドを忘れろなんて、言わないよ。」

 「ジョージ。」

 「フレッドを、かけがえのない存在を失った辛さは、一緒だから。」



じんわりと、そしてゆっくりと、あふれた涙が頬をつたう。



 「あいつと同じ、僕と同じ血の流れる子供の、父親に、僕はなりたい。」


ジョージがそっと、私の手を包み込んだ。


 「ジョージ・・・ありがとう。よろしく、おねがいします。」





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