君らしく。

笑顔を忘れない、君でいて。

は、らしく・・・生きてほしい。




Be yourself is all that you can do. 

-01-






全てが終わったとき、それは伝えられた。


 「に話せなくて・・・ゴメン。」


ヴォルデモートがこの世から消え、すこしづつ明るさがもどってきたある日。

愛しい彼の弟が、頭に包帯を巻いたジョージが、沈痛な面持ちで私の住む

フラットのベルを鳴らした。

覗き窓の向こうに見えたジョージの姿。

迎え入れた彼の、その憔悴しきった顔をみて、嫌な予感はしたけれど。



大好きだった、彼の死。



どれほど悲惨な戦闘だったかは、ジョージのその傷ついた体をみれば容易に想像がついた。

彼の深い悲しみも、その沈んだ瞳を見れば、わかる。


 「本当に眠っているみたいに・・・しかもうっすら微笑んで。でも、冷たくて。」


震える声で、ジョージが教えてくれるけれど。


涙もでてこない。

言葉もでてこない。

頭が固まってしまったような、そんな感覚。

思考が、停止しているのかもしれない。

なにか、どこかが、麻痺しているのかもしれない。

心にぽっかりと、空洞ができたような気もする。


 「、ごめん。僕がロンドンに戻ってくるのも時間がかかって・・・」


遠くで、ジョージの声が聞こえる。

温かい紅茶の入ったカップを握っているはずなのに、その手はとても冷たくて。

事実を、受け入れたくない私が、そこにいた。



* * *



通りのはずれに突然出来た、悪戯専門店。

その斜め向かいに、叔父から引き継いだ、私の営む喫茶店があった。


 「この店のコーヒー、イイね!」

 「パンチの効いたブレンドで、目が覚める!」

 「「ねえ、。近所だし、毎朝宅配してくれない?」」


それが私と双子のウィーズリーとの出会い。

朝9時半きっかりに、濃い目のモーニングコーヒーを届ける。

ちょっと寝癖のついた彼らは、私のいれたコーヒーを飲んでは


 「くぅ〜〜〜!目が覚める!」

 「効くネ、このコーヒーは!」


そういいながら、オーバーリアクションで私を笑わせてくれた。

そんな彼らと仲がよくなるのも、時間がかからなくて。


 「双子っていうけれど、あなたたち、あまり似てないのね。」


私の言葉に、彼らは顔を見合わせていた。

信じられない・・・二人の口が、そう動いたとおもう。


 「そんなこといわれたの、が初めてだよ。」

 「似てないなんて、本当かい?」

 「だって・・・あなたはフレッドだし、あなたはジョージでしょ?」


当たり前のように、彼らを見分ける私。

それが私たちの距離を一気に近づけたのか。

三人一緒に、パブでビールを飲みあう日々も、すぐに訪れた。


 「、付き合おうよ。が好きなんだ。」


いつものように、いつもの店で。

仕事上がりの一杯。

ただいつもと違うのは、ジョージが早々に酔いつぶれてしまったこと。

それを見計らったのかのように、私を口説きだしたのは、フレッド。


 「私もフレッドが好きよ? でもそういうのは酔っていないときに・・・」

 「酔ったふりをしていただけさ。今日の僕は、酔ってない。」


そういって、唇を押し付けてきた彼のキスは、レモンソーダの味。

フレッドのキスは、少し強引だけれど、甘くて、気持ち・・・イイ。

体を重れば、驚くくらい、相性がよくて。

私たちはお互いに、夢中になっていった。



けれど。



闇の支配は、確実に世間を恐怖に陥れていった。

店を訪れる客も減り、ダイアゴン横丁のどの店も、開店休業になった。

それは彼らの店も例外ではなくて。


 「ちょっと、行かなくちゃいけないんだ。」

 「?」


騎士団のことを聞いたのは、その時が初めてだった。

彼も、ジョージも、闇の力と闘う側の人だということを。

そして、これからその任務に向かうということを。

今思えば、フレッドを送り出すときに少しは覚悟していたのかもしれない。

けれど。


 「、僕は大丈夫。必ず帰ってくるよ。」


フレッドはそういって、私をギュッと抱きしめてくれた。

いつもと同じように、別れ際にキスをひとつ。

このフラットから、このドアから、笑顔を残して任務へと向かった。

それが、私が最後に見た、フレッド。



彼が、このドアを開けることは、もう二度と・・・ない。





■NEXT■