、君のパパにお願いをしたんだ。

の笑顔が、少しづつでも戻るように。

君のパパも、そして僕らも、

の笑顔が、一番好きだから。



will you make a wish - 3





進級して、数ヶ月がたった。
クリスマスムードが徐々に高まるホグワーツだけれど、
僕らはのいない心の隙間を埋めるべく、
ただひたすら悪戯にあけくれていた。

 「フレッド・ウィーズリー。ジョージ・ウィーズリー。こちらへ。」

退屈な授業を終え、さっさと退散しようとおもったところで、
いつものように、マクゴナガルが僕らを呼び寄せた。

寮監としてのお仕置きか。
それとも山ほどの宿題か。

のそのそと、僕らはそろって教壇近くまで歩み寄る。

 「先ほど、ダンブルドア校長宛にふくろう便が届きました。」

その言葉に、なぜかドキリと心臓が高鳴る。
がホグワーツを去ってから、気がつけば半年、だ。

マクゴナガルは一瞬、目を伏せ、そして僕らに向き直った。

 「のお母様が、安らかな死を迎えられたそうです。」

僕らは互いの顔を見合わせ、瞳を閉じ、深い溜息をついた。



ああ・・・この時が来てしまった。



会えない時間が、寂しくないといったら嘘になる。

それでも僕らは、との思い出のあの場所へ行って、

が笑顔であるよう、

が家族と楽しくすごしているよう、

にとって今が幸せであるようにと、

そして、その時間が少しでも長く続けばいいと、祈っていたから。



なんともいえない、重い空気があたりに漂う。

 「が来月には戻ってきます、ですから。
   あなたがたが・・・を支えておあげなさい。」

マクゴナガルが、凛とした眼差しで言い切った。
この人は、きちんとわかっている。
僕らが、なにを思い、感じ、そして考えているのかを・・・。

 「はい、マクゴナガル先生。」
 「僕らがを、支えます。」

頼みましたからね、消え入りそうなマクゴナガルの言葉を胸に、
僕らは寮へと向かった。



廊下にでても、お互い何もいえないままでいた。
ただ頭に浮かぶのは、のこと。

大切な家族を失った

彼女は今、悲しみの底にいるはずだから・・・。



君の悲しみを、僕らは癒せるかな?


 * * *


ママとの別れは、想像していたよりもとても安らかなものだった。
手を握る私に、ママは微笑んでくれた。

 「これからも、ずっと、君を愛しているよ。」

涙でグチャグチャなパパは、ママにそう誓った。
うなずくママは、少し苦しそうで。
瞳に浮かんだ涙が、スッと頬に落ちたとき。
眠るように・・・本当にそのとおりに、旅立っていった。


冷静に、ママの死を受け入れられたのは、
この半年間、家族の時間をゆっくりと過ごせたから。

いつも笑顔で、笑って過ごせたのは、フレッドとジョージのおかげ。
イギリスにある、あの丘に、私は涙を置いてきたから。


お別れの会を終え、ママを天へと導く場所にたどり着いた。
一筋の煙が、真っ青な空へと吸い込まれていく。

 「が箒で空を飛ぶとき、きっとママが近くにいるよ。」

天を仰ぎ、そっと肩を抱いてくれるパパ。
パパは私がホグワーツへ戻ることを望んでいるけれど。

 「パパ。クリスマスまで、いちゃ、ダメ?」

私の言葉に、パパは一瞬、息を飲む。

 「、ありがとう。の気持ちはよくわかるけれど。
  月がかわる前に、ホグワーツへ、おもどりなさい。」
 「でも・・・」
 「ホグワーツへの入学が決まったとき、一番喜んだのはママだよ?」 

少し困ったような、でも柔らかな笑顔で、パパは答えを出していた。
確かに、ママのあのときのはしゃぎようったら・・・。
まるで昨日のことのように思い出される。

 「それに。」
 「ん?」

パパは持っていたトランクから、何通かの手紙を取り出した。
目の前に差し出されたその封筒には、みおぼえのある汚い文字。

 「毎月、ポストに届いていたんだよ。でもパパ宛でね。」
 「フレッド・・・ジョージ・・・」
 「彼らは、ホグワーツの? わざわざ航空郵便で届いたよ。」

たしかに、それはマグル方式で届いた手紙。
をふくろう便で使えばいいのに、パパ宛にしたからなのか、
きちんとマグルの切手も貼って。

 「のことを、ちゃんと大切にしてくれる人がいたんだね。」
 「だ、黙っていてごめんなさい、パパ。あのね・・・」

フフっと笑いながら、パパは私の鼻をそっとつまむ。

 「ママに、彼らの手紙をみせたんだ。」
 「えっ、ママに??」
 「ああ。そしたらなんていったと思うかい?」 
 「なんて?」

思わずパパの顔を覗き込むと、パパの瞳が、涙で潤んでいるがわかる。

 「『昔のパパみたい!』『だから、は大丈夫よ♪』だそうだよ」

ね、ママ。そう言って、パパはまた空を見上げる。

 「パパ、わたし・・・」
 「あとで、その手紙を読んでごらん。どうするかは、が決めなさい。」

私の手の中には、ホグワーツから届いた、ふたりからの手紙。

フレッド。

ジョージ。

ありがとう。



Old Story   ▼Next Story

あとがき

越えなければならない壁は、肉親の死であったり、
別れであったり。それは人それぞれですね・・・。
夢是美的管理人nao