ねえ、

君が話してくれた丘に、僕らもいつか行ってみたいよ。

でもそれは難しそうだから・・・この場所にいるよ。



will you make a wish - 2





ジョージと私を乗せた箒は、ホグワーツを離れ、湖を横切り、
そそり立つ山間を抜けたところに広がる草原へと向かった。

 「ついたよ」

ジョージにうながされ、箒を降りる。
草の上に座り込むと、青い青い、初夏の香りがした。
初めて訪れた場所だというのに、なぜか懐かしい。

さわさわと、丈の短い柔らかな草が、風と戯れながら揺れている。

山際に小さく見えるのは、ホグワーツ。

向こうに見える湖は、雲間から差込む日の光で、キラキラ反射していて。

遠くで、鳥の鳴き声がする。

ほかには、なにもない。

 「ママの前で泣けないぶん、ここでお泣きよ。」

箒をおろしたジョージが、隣に座る。

 「、我慢しなくていいんだよ?」

あとから追いついたフレッドも、隣に寄り添う。

 「ありがと、フレッド。ありがと、ジョージ・・・」

ふたりのそばで、私は思い切り泣いた。

ママが、この世の中から消えてしまう。
ホグワーツ行きを誰よりも喜んでくれたママ。
愛情一杯に、私を育ててくれたママ。

幼い頃からの、ママとの思い出を振り返ったとき。
この場所とよく似た風景が、ふいに脳裏に浮かぶ。

 「ここって・・・」
 「から聞いていた、日本の場所に似ているだろ?」
 「と家族がよく出かけた丘、こんなカンジかい?」

ママとパパと。
ママの作ったお弁当を持って。
休日になると一緒にでかけた丘。

 「うん、とても似ている。ふたりとも・・・」
 「昨日、自主飛行訓練のときに見つけたんだ。」
 「に早く教えたかったんだけど。今日で、ゴメン」

私を見つめる、深い深い、ダークブラウンの瞳。
いつもきらめいているその瞳が、すこし影をおとしている。

そんな風に、自分を責めないで・・・。

ふたりのやさしさに、温かな涙が溢れる。

 「あぁ〜あ、やっぱりダメじゃないか。」
 「しかたないだろ? ここしか思いつかなかったし。」
 「ちがうの、ちがうの!」

 「「?」」

 「ありがとう、ふたりとも。」

フレッドに、ジョージに、ギュッと抱きつく。

 「フレッド、大好き。」

フレッドがそっと私の肩に手を置く。 

 「ジョージ、大好き。」

ジョージがふわりと頭をなでてくれる。

 「ここ、私たちの思い出の場所にしない?」
 「思い出の?」
 「場所?」
 
不思議そうに、ふたりは私の瞳をのぞき込む。
私の知っている丘に、とてもよく似たこの場所。

 「私、日本に行く! 残り少ないけれど、ママと過ごしたいし」
 「うん」
 「でも、きっとふたりに会いたくなっちゃうと思うの。」
 「うん」
 「そんなのときは、ここによく似た丘に行くから・・・」

自分で決めたことだけれど、ふたりと離れなければならないという
事実を痛感すると、寂しさで胸が一杯になりそうになる。
ママと過ごしたいのも事実だし。
でも、ふたりと一緒に過ごすホグワーツでの日々も大切だったから。

 「ふたりとも、私に会いたくなったら、ここに来て、ね?」

こぼれ落ちそうになる涙を我慢して、ニッコリ笑ってみたけれど。
無理やりの笑顔は形にならなくて。

憂いを秘めた瞳で、フレッドは私をそっと抱きしめた。

 「この場所で、のことを想っているよ。」

くしゃくしゃと私の前髪をかきながら、彼はニヤリと笑う。
それに吊られて、ジョージがふんわり微笑む。

 「の涙は、ここに置いていくんだよ?」

鼻をすこし赤くして、ジョージも私をそっと抱きしめた。

ふたりに包まれ、私は泣きつづける。
離れたくない。
失いたくない。
ママと過ごしたい。
でもふたりと過ごす学校生活も手放したくない。

この身が二つあったらよかったのに。



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あとがき

さんにとっての思い出の場所はどこですか?
naoは空港だったりします、出会いと別れの場所なのです。
夢是美的管理人nao