二つに分けることも、

どちらかを諦めることも

できない。

愛しているという、このキモチ。



How come it's You - 5





 「「、ちょっといいかい?」」

授業を終え、羊皮紙と羽ペンをばさばさと片付けはじめると
同じようなふたつの顔が、視線の先へ、にょきっと現れた。

その手は机の縁にしがみついて、クリクリッとした瞳が4つ。
じっと私を見つめるその姿は、まるで餌をねだる犬のよう。

フレッドに自分の気持ちを見透かされ、
ジョージは朝から妙によそよそしい態度。
おかげでこっちは授業もうわの空だったというのに。

なのに、いつもとかわらないふたりの様子。
おどろきつつも、ちょっと安心する。

 「いいけど・・また図書館の案内とか?」
 「ああっと、そうだな、行き先はそっちだ。」
 「そっち?」
 「途中まで一緒、なんだ。」

にぃっと微笑むフレッドもジョージも、いつもと同じ笑顔。
柔らかな笑みもいいけれど、何かをたくらんでいるような、
ちょっと悪戯っぽい微笑みも、私は好き。

 「「さぁ、行こうか。」」

二人に挟まれ、私は教室を後にした。



いつもと同じように、廊下を歩く私達。

 「週末の試合は大丈夫なの?」
 「相手はハッフルパフだけど。まぁ余裕だろ、なぁ?」
 「ああ、オリバーは息をまいてたけどな。」

いつもと同じような、ふたりとの会話。

交互に顔を見ても。
視線を合わせても。
まるで朝のことがなかったかのようなふたり。

私はといえば。

平静を装いたいのに、微妙に声がうわずってしまったり。
フレッドの腕が肩に触れただけで、ドキドキしてしまったり。
ジョージの笑顔をみただけで、顔があかくなってしまったり。

どうみたって、意識しすぎ。

 「「さて」」

フレッドとジョージの声が重なり、足がぴたりと止まった。

そこは図書室へ続く廊下の、かなり手前。
壁には、さまざまな絵画がかかっている。

足を止めたのは、どちらかといえば男子トイレの近く。

風景画のかかる壁にむかって、フレッドがなにかを唱えた。

ジョージがウィンクをして、その絵を見るように促す。

風景画は春の情景なのか、緑豊かな湖畔に、二匹の仔犬と小鹿、
そしてなぜか小さなネズミ。
楽しそうに、そして元気に飛び跳ねている。

 「よし。」

フレッドの声にもう一度その絵を見直すと、描かれていた動物達は、
なぜか、すやすやと眠っていた。

 「不思議だろ? 我が大先輩の偉大な功績。」
 「これって・・・」
 「まあ、入ってみてのお楽しみ、さ!」

ジョージが右手でその壁に触ると、ぽかりと空間ができる。

トンっと背中を押されて、その闇に私は吸い込まれた。



次の瞬間、広がったのは少し殺風景な小さな部屋。

小窓が二つあって、緋色の分厚いカーテンが、天井からぶら下がっている。

黄色いフリンジは既に色あせていて。

片隅にはチェス板が無造作に転がっている。

戸棚には小瓶にビーカー・・・実験道具かな?

唯一真新しいのは、部屋の中央に鎮座する、大きなソファー。

 「ここって、隠し部屋?」
 「「ご名答!」」

ふたりはバフっと音を立て、ソファーの両端に座った。
ポンポンと同じ調子で、ふたりはその間をはたく。

促されるように、私はそこへ腰を下ろした。
3人で並んで座っているというのに、十分と余裕のあるソファー。
その座り心地はバツグンで。
ふたりの間に挟まれているという幸せもあわさって、
自然と笑顔になってしまう。

 「ねぇ、。朝のこと、おぼえている?」

いきなりフレッドからその話題が振られるなんて!
あの時のドキドキを思い出して、一気に顔が赤くなる。

 「あ、お、おぼえているけど・・・」
 「ふ〜ん。」

意味深にジョージの方へとフレッドが視線を移すと、
それに答えるかのようにジョージが軽くうなずいた。

 「

名前をよばれ、その方向へ顔を向けると、
スローモーションのように、ジョージの顔が近づいた。
柔らかな唇が、私の唇をとらえる。

 「愛してる、僕らと付き合ってよ。」

スッと離れ、ニッコリと微笑むジョージ。
息を吸うのも忘れそうなくらい、ビックリしていると

 「僕のことも、忘れないで。」

あごを引き寄せられ、フレッドの唇が重なる。
ふんわりとあたたかな感触だけを残して、離れていく。

 「言ったろ? 三人で付き合おうって。」

フレッドも双子らしく、ジョージと同じような微笑み。
まるでそれは、教会にあったフレスコ画の、2人の天使様。

 「わたしで、いいのかな?」

自信がないとかじゃなくて。
ふとよぎった、素朴な疑問。
 
 「が、いい。」
 「じゃなきゃ、イヤなんだ。」

 「「だから、僕らは好きになったんだよ?」」

それは今まで見たことがないくらい、真剣な眼差し。

ふたりからの、真実の答え。

 「どちらかなんて、決めなくていいの?」
 「ああ」
 「ふたりがすき、で、いいの?」
 「そうだよ?」

包み込まれる、あたたかな、ふんわりとした、2人の笑顔。

幼い頃、迷い込んだ小さな教会にあったフレスコ画。
同じように描かれた、2人の天使様。
目の前にいるのは、あの時の笑顔をたたえた天使?

ううん、まぎれもなく、フレッドとジョージ。

 「わたしも、ふたりが、大好き。ううん、愛してる!」




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あとがき


な〜〜〜んか、グダグダでスミマセン。
あと少しだけ、続きます。
風景画の意味、わかっていただけたら嬉しいデス♪

夢是美的管理人nao