恋に落ちたのは必然。
だけど二人の関係は、秘密。
Secret Honey -1-
「・・・ということです。なにか質問は?」
月曜1限目のアジア魔法史は、私の担当。
早く授業を終わらせたいのか、大半の生徒はうつむいている。
けれど。
彼だけはまっすぐこちらを見ている。
いつもと違う、ジョージ・ウィーズリー。
なにかいいだけな口元も、訴えかけるような眼差しも、
気のせいじゃ、ない。
わかってる。
ジョージの視線に、首筋が・・・胸が・・・ううん、
体中が、火照る。
昨日の悦楽を、体が覚えているから。
きっと、彼も・・・気づいている。
「ないようなので、今日はここまで。」
生徒達がそろって出て行くのを尻目に、ジョージは立つこともなく、
頬杖をついて、じっとコチラを見ている。
ひとり、またひとりと教室を出て。
残ったのは、私とジョージ・ウィーズリーの、ふたり。
かわりばえのない日常、だった。
もう、変わってしまうかもしれない・・・。
意識しないように教科書と教材を片付けるけれど、妙に緊張する。
「先生。」
埃の舞う広い教室に、ジョージのテナー・ボイスが響いた。
鼓動が、早まるのがわかる。
「どうしたんですか? ジョージ・ウィーズリー。」
ジョージに背をむけ、黒板に掲示したものを取り外す。
努めて冷静に返事をしたつもりだけど、コツン、コツンと、
近づく彼の足音が、より一層、胸の鼓動を早まらせる。
「・・・。」
「ひゃっ!!」
耳元でそっと、甘い吐息とともに囁かれ、思わず声をあげてしまった。
振り向くとジョージはすぐそばにいて。
黒板に手をつき、私をローブですっぽり覆っている。
これじゃ、逃げ場が・・・ない。
「耳、やっぱり弱いんですね。」
「ジョージ・ウィーズリー、何のことです。」
「先生の仮面をかぶって、そうやって、とぼけるつもりですか?」
覗き込む綺麗なブラウンの瞳は、私の心の底まで見透かすよう。
目を逸らしたいけれど、できなくて。
「なにが、目的なの?」
「目的なんてないですよ、ただ・・・」
「ただ?」
「昨日のセンセイ、めちゃくちゃ可愛かったから。」
「っ!!」
私の慌てた表情をみて、ニヤリと満足げに微笑むジョージは
絶対に楽しんでいるとしか思えない。
やっぱり私と知っていて・・・。
「今晩も、と・・・シたい。」
「ジョっ!?」
「25時。この教室で待ってますよ、、、先生。」
「・・・んっ」
ジョージの唇が、私の唇をついばむ。
ふんわりと、柔らかい、キス。
気持ちよくて、せがみたくなる、キス。
「あ、昨日の仮面はもういりませんよ?」
「・・・。」
いつものようにニヤリと笑って、彼は教室から出て行った。
キスの感触と、グリーンノートを残して・・・。
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