クルクル変わる、の表情。
このひとときを、手放したくない僕がいる。
これからも、いつもの場所で、、君に会いたい。
Introvert Lovers -08-
「「おはよ、!」」
朝食の時間。いつもと同じくざわつくグレイトホールで、いつもと
変わらない調子で、フレッドとジョージが朝の挨拶をしてきた。
「お、おはよ。」
昨晩のことがすこし気恥ずかしい私はつい、声が小さくなる。
ふたりはお構いなしにロンを挟んで私の斜め前に座ると、
ああでもないこうでもないと、翌日のクィディッチの試合に向けて
お互いのダメ出しをはじめた。
双子は双子。
どちらがフレッドかなんて、気にしない人もいるかもしれない。
でも。
私は、フレッドが【好き】だから。
朝食をガツガツと食べ終え、そろそろ寮へと戻ろうとしている
向かって左側にいる彼に、私は思い切って声をかけてみた。
「フレッ・・・ド」
「ん? なんだい? 。」
首をかしげ、ニカっという言葉がぴったりの優しい笑顔。
(あ。やっぱり彼がフレッドだ。)
自分がちゃんとフレッドを見分けられていることに少し驚きつつも
同時になんだか嬉しくなった。
「あのね、話があるの。」
「オッケー、っていっても練習の後になるけどいい?」
「うん!」
「じゃぁ、、後で。」
フレッドと、二人で逢う約束なんて初めて交わしたかもしれない。
勉強を見てもらうときじゃなく、ちゃんと時間をとってくれたことが、
嬉しくて嬉しくて。
その日は一日、苦手なマグル学も、魔法薬学の時間さえもあっという
間に過ぎ去った。
放課後。
私は図書室で貸出予約をしていた本を受け取り、中庭で枯葉がダンス
する音をBGMにパラパラと本を眺め、クィディッチの練習が終わる
タイミングの少し前に、談話室へもどってみることにした。
人気の少ない談話室には、小さな紙飛行機がくるくると旋回している。
その不思議な光景を見ていると、紙飛行機は徐々に降下してきた。
私が手を広げると、それはふわりと着地し、一枚のメモ用紙に・・・。
『へ
今の時期、天文台から見る夕焼けが綺麗だよ。』
見覚えのある文字を確認し、窓の外へと視線をうつす。
四角に切り取られた空が、徐々にオレンジ色へと染まりはじめている。
私は気がつくと、天文台へと駆けだしていた。
* * *
天文台から外への扉をあけると、そこにはシルエットが一つ。
「フレッド?」
夕焼けの空に、より赤く染まった赤毛のフレッドがいた。
「。ほら、夕焼けが綺麗だろ?」
「うわぁ…すごい、綺麗!!」
フレッドの隣に並び、空を見つめる。
目の前は眩しい赤とオレンジの空。
頭上は薄紫から薄い青へ。
綺麗なグラデーションの空がそこにはひろがっていた。
「フレッド、綺麗だね! すごいね!!」
思わずはしゃぐ私をみて、フレッドはとても満足げに
微笑んでいる。
よく見ればクィディッチの練習を終えてそのまま来たのだろう。
練習着のままのフレッドの傍らには、愛用の箒があった。
「あの、フレッ…」
「。昨日はごめん。」
私の言葉をさえぎるように、フレッドが謝罪の言葉を口にした。
「フレッド、私は大丈夫だよ?」
けれどフレッドは首を横にふる。
「ジョージに、自分のフリをされたことにカッとしたよ」
「…え」
「僕の代わりをアイツにしてほしくない…の前では。」
フレッドの顔が赤く見えるのは、夕焼けのせい?
恥ずかしそうに鼻の頭をかきながらフレッドは言葉を続ける。
「こんな感情、正直初めてなんだ。」
「ちょ…」
真剣なフレッドが、私の瞳をじっと見つめた。
一度だけ見たことのある、あの潤んだ瞳。
「のことを見守るのは、いつだって僕でありたいから。」
フレッドの唇が、私の瞼にそっと重なった。
「大切にする。・、大好きだよ。」
「フレッド…その・・・私も……好き。」
ふんわりと、フレッドのぬくもりが私の肩を包み込む。
グリーンノートと、かすかな汗の…フレッドの香り。
「私から、告白する予定だったのに。」
彼の胸に頬をうずめながら、悔し紛れに言い訳してみた。
「でも、きっと僕のほうが先に告白するって決めてたよ」
「なんで?」
「夢の中で、何回もに好きって言っていたからね。」
「っ!?」
まるで私の夢をのぞき見られたと思うくらい驚いてしまった。
「昨日の熱の原因。にバイバイした後、外で星を眺め
ながら考え事をしていたからなんだ。」
「考え事?」
「このままでいいのか、けじめをつけるべきか、ってね。」
フレッドの頬が頭の上に触れたのと同時に、少しだけ強く、
抱きしめられた。
「きっかけは、今朝のだよ。」
「私?」
「ああ。ちょっと内向的なが、勇気を出してくれた。」
夕闇が迫る中、嬉しそうなフレッドの声が、耳元で響く。
「だから、僕もね。ちゃんと好きだって伝えたくなった。」
「フレッド…」
スッと私の顎をフレッドの指が支えると、彼の唇が、私の唇と
重なった。
ほんの数秒、だけど夢にまでみた瞬間。
「勇気をありがとう、。」
END
▲Old Story