Ghost Waltz - Story 1 -
焙煎されたコーヒーの香りが漂う、ホグズミードのとある喫茶店には、
大きな窓が配された、通りを一望できる二階席がある。
私は窓際のカウンターに座り、カカオとコーヒーのマリアージュが
絶妙なショコラカフェを、そっと口にした。
「、いつもゴメンね!」
「いいよー、待ってるから」
ホグズミードで働く彼の元へと、頬を染めて駆け寄るルームメイトを見送り、
彼女が戻るまでの小一時間、喫茶店のお気に入りの席に座り外を眺める。
それが私のホグズミードでの悪くない日課となりつつある。
平和と活気を取り戻したホグズミードは、メインストリートも細道も、
いつも人々で溢れている。
買出しに来た親子に、仕事帰りのおじさん、そしてホグワーツの生徒。
そのどの顔も、みんな笑顔。
「あ…フレッド・ウィーズリー!!」
人ごみの中を、長身で赤毛の青年が、颯爽と歩いていた。
二階から見つめる私に気づいたのか、彼はニッコリと優しく微笑んで、
そして人ごみの中に紛れて、消えた。
「ふふ、目があっちゃった。」
憧れのフレッドに、微笑みかけられるなんて…。
嬉しくて、つい口元が緩んでしまう。
小さな幸せを噛みしめはじめた、その時。
私は、我に返った。
ううん、そんなはずはない。
というか、ありえない。
だって。
フレッド・ウィーズリーは、
もう、
この世にはいないのだから。
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