貰う側から、あげる側へ。
君の喜ぶ顔を想像して、店から店へ。
悩みながら、散々歩き回ったよ。
身体は疲れてるけど、心はとても満たされている。
僕にこんな幸せを与えてくれるのは、世界でただ一人。
Present for you...
「ジョージ。クリスマスって、どうするの?」
「え? そりゃあ、隠れ穴に帰るよ。」
「・・・っ。」
不思議に思って返事のない方向を振り返ると、肩を落とし、
口を中途半端にあけたが、その瞳に寂しそうな色をたたえていた。
「日本って国は、不思議な国なんだな。」
「そう、なのかな・・・私はそれが普通だとおもっていたから。」
たまらず近くのベンチに腰かけて、を慰めながら聞いたのは、
の国でのクリスマスの過ごし方。
クリスマスは家族とゆっくり過ごす。
それが普通のことだと思っていた僕だけれど。
の国では、話が違うらしい。
「日本の男の子は、クリスマスに向けて大変なんだな。」
「うん。その日が恋人達にとってはとても特別な日なの。」
「そっかぁ。でも、僕は家に帰るわけだし・・・うーん。」
「そうだよね、ごめんね! こ、困らせて。」
すっくと立ち上がったが、ニッコリ笑ってその場を立ち去ろうとする。
その瞳に、いっぱいの涙をためて。
ズキっ。
胸の奥が痛い。
このままで、いいわけ、ない。
「!」
「・・ジョージ?」
「24日、1時間だけだけど、ダイヤゴン横丁にはこれるかい?」
「うん、大丈夫。」
「だったらOK。デート、しよ?」
瞬間、の顔に広がったのは、嬉しそうな笑顔。
蕾がひらくかのように、華やかに変わったその表情。
返事を聞く前に、君の答えがわかったよ。
* * *
クリスマス休暇。
僕はフレッドや兄貴たちと一緒に、ホグワーツ城を後にした。
休暇をロンドンで過ごすというは、またねと手を振る。
僕もまたねと、手を振り返す。
クリスマスイブに、会うことを約束して。
家に戻れば口うるさいママと、理解ある大好きなパパ。
そしてからかい甲斐のある弟と、可愛い妹。
家族全員で、クリスマスに向けて支度をはじめる。
部屋の片付け、掃除、毎年同じ風景。
そして今日は、クリスマスイブ。
「ママ。買いだしは僕が行くよ。」
「あらジョージちゃん、嬉しいことをいってくれるのね!」
「めずらしいな、ジョージ。いつもなら暖炉の掃除なのに。」
「うるさい、ロン。」
一言多い弟には、愛の鉄拳を。
パパと一緒に樅の木を切り出しに行くフレッドからは、エールの
ウィンクを貰って。
「ダイアゴン横丁!」
フルーパウダーをひとつかみ。
いざ雪の街へ・・・。
クリスマス前のセールということもあって、横丁の店は赤と緑の
オンパレード。
そしてどこも賑わっている。
ママに頼まれたモノをさっさと買い終え、僕はへのプレゼント
選びをはじめた。
とりあえず目に付く店に入っては、悩み、そしてまた次の店へ。
可愛いアクセサリーボックス。
好みな写真立て。
あたたかそうな手袋。
に似合いそうなリボン。
いまいちピンとこない。
歩き回って、さすがに足も痛い。
そんなときだ。
見逃しそうだった、横丁の外れにある店。
僕はそこで、みつけた。
の好きな、氷の結晶を模ったペンダント。
君は、どんな顔をしてこの包みを開けるのかな。
想像しているだけなのに、こんなにも心が温かくなるなんて。
の笑顔が、の喜ぶ顔が、目に浮かぶ。
そして僕は、自然と笑顔になっていた。
約束の時間5分前。
樅の木の下、がいる。
あと数歩。
君は僕に、気づくだろう。
ママにこき使われ、プレゼント選びで歩き回って。
身体は疲れてるけど、心はとても満たされている。
僕にこんな幸せを与えてくれるのは、世界でただ一人だけ。
と、と一緒に過ごせるクリスマスに感謝して。
「、メリークリスマス!」
END