チリリンと、清らかに響く。
その音は、談話室のツリーに飾ったベル。
キミから届いた、プレゼント。
Christmas Bell
〜Where are you Now? Next story〜
「おい、ジョージ。あのふくろう便って・・・」
「!?」
フレッドの声に顔をあげれば、沢山のふくろうにまじり、
老体のふくろうが、一羽。
久しぶりの仕事と言わんばかりに、のふくろうだった が、
僕らの頭上を旋回していた。
がコトリと落とした小さな包みを、僕がキャッチする。
「これ・・・からだ。」
「マジかよ!?」
驚いたフレッドが、僕の手を覗き込む。
赤い包み紙に、緑色の紐。
付けられた送付書には、懐かしい文字で僕らの宛名が綴られている。
愛らしくもかわいらしい、の文字。
はそのままふくろう小屋へもどったのか、
気がつくとその姿はなかった。
「包み、あけようぜ。」
「あ、ああ。」
フレッドにせかされて、改めて包みに目を落とす。
このプレゼントは、ドコから届いたのか。
気にしながらも紐を解き、包み開く。
フワフワした緩衝材に包まれた、透明なベル。
「ガラス?」
「メッセージが。。。」
ガラス製のベルには、メッセージが吹き付けて
書かれてあった。
それは、僕らの知らない国の文字。
「それ、日本語ね。」
「日本語だって!?」
「本当なのか、ハーマイオニー!?」
「この期に及んで、嘘なんて言わないわ。」
覗き込んだハーマイオニーが、教えてくれた言語。
それは、が、今いる国の言葉。
何が、書かれているのか。
知りたい。
その衝動が、僕らを突き動かす。
さすがのハーマイオニーも言葉の意味までわからなくて。
読み方だけを教えてもらい、僕らは図書館へと駆け込んた。
「フレッド、このあたりの辞書だ!」
「あぁっ・・・あった!!」
すっかり埃を被った日英辞典。
その見つけた辞書から、むさぼるようにして文字を探す。
『メリークリスマス
フレッドとジョージに また会える日が
早く訪れることを祈って・・・。
・』
意味が、わかった。
希望の光が、見えた。
「に、会えるんだな。」
「ああ。」
僕らの宛名が書かれた紙には、の住む街も書いてあった。
また、会える。
「オキナワって、日本の街の名前なんだな。」
「日本で、元気でいてくれたんだ。」
ほっと息をついて、フレッドの背中によりかかると、
同じタイミングでフレッドも僕の背中によりかかってきた。
丁度良いタイミングと、バランス。
が元気でいる。
が会いたいと思ってくれている。
クリスマスイブ前日に届いた、からのプレゼントで、
僕らは久しぶりに、安堵感に包まれた。
フレッドはベルについた紐を摘まんで、揺らす。
しかし、カタカタと、こもった音がするだけ。
「ちょっと見せてみろよ。」
「壊すなよ?」
「ロニィ坊やじゃあるまいし。」
「言えてる。」
よくみれば、ベルの中に紙が挟まっていた。
クラッパー部分を覆っていた紙を、そっとはがす。
チリリン
澄んだ音色が、人気の少ない図書館に響く。
それは聖夜に似合うベルの音。
「ジョージ、からの手紙だ。」
「え?」
小さな紙を、そっとフレッドが差し出した。
それはクラッパー部分を覆っていた紙。
フレッドに渡した包み紙。
それはただの包み紙ではなくて、からの手紙だった。
『お元気ですか? 私のこと、覚えている?
パパの仕事の都合で、今は日本にいます。
いろいろあって連絡できなくて、ごめんなさい。
だけど来年のクリスマスは、イギリスに戻ります。
フレッドとジョージに、また会いたいです。』
あれから1年。
のいない、2度目のクリスマスがもうすぐ訪れるけれど。
今年は、の送ってくれたベルを、ツリーに飾る。
君のかわりに、一緒にクリスマスを祝う。
チリリン
聖夜に響く、清らかなベル。
来年は、きっと、君と一緒に過ごす、クリスマス。
Merry Christmas!!
END