小さな小さな、ふくろうのぬいぐるみ。
胸についたスワロフスキーの小さなボタン。
煤だらけの指で、そっと押してみる。
「・です。」
「フレッドが好きだよ!」
「ジョージが好きだよ!」
。
こんな場所でも、君の声が、きこえるよ・・・。
Every...
「いつでも?」
「「そう!」」
「たとえそれが授業中でも」
「たとえそれが練習中でも」
「いつでも」
「の声を」
「「僕らはききたいんだ!」」
放課後の、誰もいなくなった教室。
燃えるような赤毛の彼らは、にっこりと微笑む。
「どこでも?」
「「もちろん!」」
「たとえそれがスネイプの教室だろうが」
「たとえそれがクィディッチ競技場だろうが」
「どこでも」
「「の声がききたいんだ!」」
一生懸命願う彼らの姿は、懇願とでも言い表せばよいのか。
あまりにも必死なその様子に、私も根負け。
差し出されたメモを、読んで欲しいと、言われるままにした。
なぜって?
声を使った仕事をするのが、私の夢だから。
「フレッド、ジョージ。あなたたちが私の最初のお客さんね!」
「「きゃ、客?」」
「そうよ? お金、いただくわよ〜! 3シックルで。」
「げげ!」
「せめて1人1シックル、計2シックルで・・・」
私だってウィーズリー家の実情を知らないわけではなくて。
初仕事とはいえ、ふっかけるわけにもいかず。
「お友達価格、1シックルで手をうつわ!」
「「・・・さすが、。」」
彼らは嬉々として1シックルを差し出した。
同じ寮だし、それなりに会話もあったけれど、私の声に需要があるとは。
彼らに対してとくに意識はしたことなかったけれど、これも仕事の一つ。
なにより、依頼主である彼らの満足いくものに仕上げるのが大切。
きちんと、感情を込めて。
私のによく似た、小さなふくろうの人形に語りかける。
「「・・・!!!」」
「よろこんでいただけた?」
「もちろんさ!」
「ありがとう、大切にするよ!!」
がらんとした教室を、嬉しそうに飛び出すウィーズリーの双子。
軽々とスポーツや、悪戯をこなす彼らからは、うかがい知れない別の一面。
この先、彼らが何をやらかすか、見ているのは楽しいけれど。
その傍らに、私の声があるのは、それはそれで嬉しいような。
なんだかむず痒い感情。
いつでも、私の声をきいてね。
どこでも、私の声をきいてね。
私の声で、元気になれるなら。
そして、私を、わすれないでね。
END