これからもずっと、見つめていたい。
誰よりも大切な、。
君の笑顔を。
Second Smile
ぼんやりと、ただぼんやりと窓から見える空を眺めていた。
放課後の談話室。
その窓から見える空が、綺麗な『蒼(あお)』だなって。
なのに・・・
「なぁ。って、いっつも不機嫌じゃないか?」
「え、そんなことないと思うけど?」
クラスメートの・・・そんな言葉が耳に入った。
あれは、ウィーズリーの双子。
彼らのほうに向き直って、ニッコリ。
でもそれは、ひきつったような作り笑い。
不機嫌そう?
まさか。
どちらかといえば、機嫌がいいのに。
いつからだろう・・・そんなふうにいわれるようになったのは。
『黙っていると、怒っているみたいよ?』
昔、誰かに言われた言葉が脳裏をよぎる。
私の顔って、そんなに・・・。
おもわず手鏡を取り出して、その中に映る顔を見る。
そこにあるのは、いつもとおなじ、私の顔。
朝は、目覚しなしで起きることができた。
ランチは、食べたかったクランベリーのスコーンだったし。
ちょっと苦手な基本呪文演習も、今日は上手く出来た。
機嫌が悪いワケ、ないのに。。。
ただ、いつものように黙っていただけ。
いつもの私のつもりだった。
「、ごめん。」
「!?」
その声に驚いて顔をあげれば、ウィーズリーの双子。
ひとりが申し訳なさそうにあやまって。
もうひとりはバツが悪そうに頭をかいている。
「その、、、ごめん。」
「謝らなくていいわよ、別に。」
「「?」」
スッと立ち上がり、私は女子寮へと続く階段に、足をむける。
いつものこと。
いつものことだから。
「いつものことだから、気にしないで。」
振り返って、ニッコリ。
笑ったつもりだったけれど、これもまた作り笑顔。
私の本当の笑顔、どこに行っちゃったの?
* * *
異国の学校。
異国の言葉。
入学前から苦手ではなかった言語だし、それなりに勉強もした。
けれど、いざ入学してみるとやっぱり戸惑うことも多くて。
『は、私たちの会話に追いつけないみたいよ?』
そんなことを、誰かに言われてからかもしれない。
会話の内容は理解できていたけれど、そのあとの一歩がだせなくて。
気がつくと、私は一人。
入学して半月もする頃には、一人で過ごすのが当たり前になっていた。
それは3ヶ月たった今も変わらなくて。
「ごめん・・・だって。ふふっ。かわいいなぁ〜、ふたりとも。」
申し訳なさそうな双子の顔を、ふと思い出す。
同室の寮生は、クィディッチの練習を見に行っていない。
私の声だけが、室内に響く。
「あの双子、案外いいヒトかも・・・」
そんなことをぼんやり感じた。
ベッドから見える窓の外は、薄紫色とオレンジ。
夕焼けが、とても綺麗だった。
* * *
「おい、とうとうアレをやるか?」
「当たり前だろ? そのためにこの一ヶ月、おとなしくしていたんだ。」
斜め後ろ、双子のウィーズリーの席あたりから、ヒソヒソ声が聞こえる。
私は魔法薬の授業では、緊張してしまうというのに。
彼らは相変わらずのマイペースというか。
まもなく魔法薬の授業は終わりを迎える。
これでもかと宿題を出すスネイプ教授だけれど、キチンとこなせば特に怖い
わけでもなくて。
ただ。
今回の宿題範囲には気になることがあって。
授業が終わり次第、質問しようと思っていた。
双子が後方でガサガサと音を立てているのも気になったけれど、出口に向かう
生徒の波が落ち着くのをまって、私はスネイプ教授の方へと向かった。
「スネイプ教授、少々おうかがいし・・・」
「うわ!」
「やっべぇ!!」
私の声に、双子の声が重なって・・・
ボフンっ!!
小さな爆発音とともに、なんともいえない臭いと煙が周囲を包んだ。
煙が晴れて、双子のいたあたりをみると。。。糞まみれの赤毛な少年がいた。
「ちょ・・・なに、、、してるの?」
彼らの姿が、あまりにもおかしくて。
悪いなと思いながら声をかけるけれど、ついつい笑みがこぼれてしまう。
「ひどいなぁ〜、笑うなんて。」
「そうだよ、世紀の瞬間を見ることができそうだったのに。」
「・・・ごめんね。はい、これどうぞ。」
全身に着いた付着物に、困惑する彼らへハンカチを渡す。
「その状況だと、あまり役に立ちそうにないけれど!」
笑いが堪え切れなくて、ハンカチを渡して出口に駆け出した。
スネイプ教授への質問なんて、すっかり忘れて。
螺旋階段を登り、途中の柱に体を預けて、笑った。
久しぶりに、声をあげて。
おかしくて、おかしくて、涙まで出てきた。
どのくらい笑ったのだろう。
窓から空を見上げて、深呼吸をした。
綺麗な、蒼。
「、笑いすぎじゃないか?」
「そうだよ、地下まで君の笑い声が聞こえた。」
その声の主は、さっきまで情けない状況にあった双子。
私の寄りかかる柱に手をかけ、気がつけば彼らに囲まれてしまった。
糞まみれだったはずなのに、すっかり綺麗になっている。
「あれ? なんで???」
「スネイプが、一瞬で。」
「我輩の部屋を汚すな! とかなんとか言いながら。」
声真似をしながら解説するふたりがおかしくて。
ついクスッと笑ってしまう。
「・・・その笑顔、かわいいのに。」
「え?」
「さっきの笑顔も、かわいいのに。」
「ちょっ・・・え??」
いきなりそんなことを言われて、顔が赤くなるのがわかる。
笑顔が、かわいいだなんて・・・う、うそ!!
「照れてる顔も」
「かわいいよ!」
2人が
私の頬に
キスをした。
「のセカンドスマイル」
「の本当の笑顔」
「「ずっと見ていたいな!」」
いつもの作り笑顔じゃない、私の本当の、笑顔。
それをひきだしてくれた、ふたり。
私が貸したハンカチを使って、ポンっと花束を出した。
小さくて、可愛い、薄紫色の花束。
二つに分けて、ふたり同時に片膝をつき、うやうやしく挨拶。
それこそ物語のナイトみたいに、花束を私に差し出す。
「我らウィーズリーの双子は」
「・のナイトとなりましょう。」
カッコいいけれど。
彼ららしくなくて、やっぱり笑ってしまった。
せっかく決めたのに、とでもいいたげに、彼らは立ち上がる。
「ねぇ。。。ナイトで、いいの?」
「あ、いや・・・その。これは言葉のあやというか」
「カッコつけてみたかっただけで・・・その。う〜ん。」
「「僕たち、友達になれるかな?」」
私より、少し背の高い、赤毛の双子。
悪戯好きな、双子のウィーズリー。
私を笑顔にしてくれた、彼ら。
「もちろん。よろしくね!」
END