いつかきっと。
の好きな、おとぎ話のように
僕らは幸せな結末を、迎えるはず。
僕はそう、信じている。
Fairy tale...
宿題を終え、シャワーを浴び、眠りにつくまでの数時間。
お気に入りの童話を片手に、談話室のソファーでまどろむ。
それが私の好きな過ごし方。
「やぁ、。今日もお姫様はおとぎ話の世界かい?」
嗚呼! また邪魔にきたわね、フレッド。
ホグワーツに入学したときからそうだった。
なにかと人のすることに口を挟んだり邪魔したり。
悪戯されることはないにせよ、彼は、私の幸せな時間を
必ず邪魔して、そして瞬時にリアルへと引き戻す。
「ええそうよ。悪いかしら? フレッド・ウィーズリー。」
「滅相もない。ただ、君の読むお話がちょっと気になってね。」
「へ?!」
「このフレッドめの朗読で、楽しむのも一興かと?」
「はぁ・・・。」
めずらしい・・・というか、こんなこと初めてで。
思わず口をあけたまま、間抜けな返事しかできなくて。
お気に入りの童話は、そのままフレッドの手に収まり、
彼は戸惑うことなく、私の右隣に腰を下ろした。
「グリム童話。僕のオススメは・・・コレ、かな?」
開いていたページとは違う、数章先の物語。
大きな手でその本を包み、長くて細い指でそのページを支える。
彼が読み始めたのは、私も好きな物語。
『白雪姫』
「昔々、あるところに・・・」
思いのほか、心地よいフレッドの声。
感情を込めるとか、そういう大げさな朗読ではなくて。
淡々と、だけどブレスのタイミングがバツグンというか。
とても胸に響く、読み方。
彼は読みなれている、のかもしれない。
いつもなら物語に夢中になるはずなのに。
私は自然とフレッドの声に、聞き入っていた。
「あの・・・?」
「っ!?」
気がつくと、フレッドの顔が目の前にあって。
驚いて思わず体をそらしてしまいそうになったのに。
彼の手が、私の肩を抱き寄せた。
「。そんなに僕の声、心地よかったかい?」
「そ、そんな・・・よかったデス。」
「素直でいいね、。」
満足げなフレッドの言葉に反応して、顔が赤くなるのがわかる。
恥ずかしくて、彼の胸の中で、肩をすくめてしまった。
「こんなに聞き入ってもらえるとは思わなくてね。」
「フレッドの朗読、とても上手よ?」
「お褒めに預かり光栄、妹のおかげかもな。」
「妹?」
「ああ、来年ホグワーツに入学するんだ。妹が・・・」
ふたりの視線は、暖炉。
暖炉の柔らかな炎が、フレッドと私を照らす。
いつもよりも、なんだか落ち着いて会話が出来ている。
彼が隣にいることが、まるで当たり前のようで。
フレッドの、童話の好きな妹の話。
彼女にせがまれて、よく童話を読まされたこと。
妹はシンデレラが好きだけれど、フレッドは白雪姫が好きだということ。
正直、この3年間で、一番彼と会話をしている時間かもしれない。
普段ならあまり話さないようなことさえも、フレッドが話してくれて。
しかも、こんなに密着・・・みっちゃくぅ!?
「っ!!」
「どうしたんだい、?」
我に返った私は、思わず体がこわばった。
フレッドがこんなに優しいなんて、なにかあるかもしれない!
実は近くにジョージが隠れていて、なにか起きるのを待っているのかも?
「フレッド、私を油断させてなにかする気とか?」
「はぁ?」
「もしかして、もうどうにかなってるの? 私の顔とか??」
「、ちょ、ちょっと落ち着いてくれよ。」
思わず私は彼のそばから飛び退いた。
けれど一瞬早く、フレッドが私の腕を掴んだ。
見渡せば、談話室に人影はなくて・・・。
私とフレッドがいるだけで・・・。
微妙な静寂の中、溜息を一つ、フレッドはついた。
「もうすこし、は感のいいコだと思っていたんだけど。」
「感のイイって・・・」
「僕と一緒にいて、落ち着くって思わなかった?」
「・・・思った。」
「僕の声を、心地いいって、言ってくれたよね?」
「うん。。。」
グイッと引き寄せられて、私はまた、フレッドの胸の中。
暖かくて、広い、フレッドの胸の中。
「のこと。この3年間、ずっと見てきたんだ。」
「フレッド・・・」
「。僕のキスは、王子様のキスになるのかな・・・」
重ねられた唇は、ちょっぴりかさかさとしていて。
見つめ返したフレッドの瞳に、思わず吸い込まれそうで。
恥ずかしくて頬を埋めた彼の胸から、少し早い鼓動が聞こえた。
「フレッドは、私の王子様、かもね・・・。」
「お姫様は、目を覚ました?」
「おとぎ話なら、ハッピーエンド、ね。」
「!」
抱きしめられた感触は、リアル。
ココから先は、おとぎ話にはないけれど。
きっと、ハッピーエンドが待っているって。
私は、信じてる。
END