後ろから、そっと抱きしめる。

 「・・・

耳元で名前をささやくと、なぁに?との可愛い声。

僕の温もり、僕のオモイ。

君に、伝わっているのかな・・・。





Please be happy







新学期が始まり、談話室の暖炉が、そしてヒトの温もりが恋しくなりはじめる。

マフラーと手袋をクローゼットから出すべきか、今朝も悩んだ。


 「もう、秋なんだね・・・」


本日最後の授業が終わり、宿題を集めるさなか。

教室の外を眺めるが、ポツリとつぶやく。


 「なに感傷に浸っているんだい?。」

 「ジョージ、あのね・・・」


なにか言いたそうな、けれどソレを悩んでいるような。

いつもなら、クィディッチの練習を見せてほしいとか、夕食のメニューはなぁにと

楽しそうに予想したりと、明るく元気ななのに。

今日の彼女は、すこし違った。


 「ん? きになるよ、話続けて。」

 「・・・ううん、いいの。」

 「?」


いつもの明るさが、どうもない。

問いかけても返事をしないまま、はスッと立ち上がり、教室を出ていこうとする。


 「僕に、話せないこと?」


は、僕の目を見ようとしない。

それどころか、君の手を掴んで引き止めたのに、はその手を振り解く。


 「すこし、ひとりになりたいの」


振り払われた手は、宙に浮いたままで。

パタパタと、乾いた足音は廊下へ駆け抜けていった。


 「なんだよジョージ、ふられたのか? さ、今日は練習だぞ!」


意気込むフレッドに引っ張られ、僕は練習場へと連れて行かれた。

のそのそと、ウェアに着替えながら、おもわず考える。


僕が何かをしたのか? 

いいや。

彼女を傷つけるような言葉を発したか? 

いいや。

いったいなにが原因なんだろう・・・。



* * *



夏期休暇に入る直前、僕はホグワーツ特急の中で、に告白した。


 「返事はふくろう便にしてくれるかい? 今、聞くのが怖いんだ。」

 「うん、わかった。」


ニッコリ笑うに、少し期待をしながら隠れ穴にもどった。

数日後、ふくろう便が僕宛に届く。

 『 Yes 』

その言葉がどんなにうれしかったか。

僕はフルーパウダーを使って、に会いにいった。

いてもたってもいられなかったから。

新学期が待ちきれなかったから。

暖炉の前にいたを、僕はたまらず抱きしめた。


 「すごく、嬉しい。 大好き、ジョージ!」


互いの家を行き来して、僕はめずらしく宿題もした。

と過ごす時間はあっという間で。

それは楽しい夏休みになった。


新学期になって、ホグワーツに戻ると、僕らが付き合い始めたことは

徐々に知れ渡るようになった。

とはいっても、宣言してまで付き合うものでもなかったし。

僕は取り立てて気にしていなかった。

それだけに、の態度が気になった。



* * *



いつものように練習場を抜け、箒を片手にロードワークへ向かう。

先頭はフレッドとアンジェリーナ、オリバーと新入りのハリーが続く。

他のメンバーがその後ろを追い、僕はいつものように最後尾。

晴れ渡る空は、雲が高くにあって。

先に見える暴れ柳は、すっかり葉が落ちている。

その近くにある岩場に、らしき人影と、数人の女子生徒の人影があった。


 「アンジェ、悪い。急用なんだ。」

 「はぁ!? ジョージ・・・居残り決定よ!」


手にした箒がもどかしいけれど、僕はその場所へそっと近づいた。

岩場の陰から見える少女は、やはりだった。

あとは・・・グリフィンドールの女子生徒だ。

僕ら双子を応援してくれている子だということは、よくわかる。

今までも、いろいろとプレゼントをしてくれたから。


 「、ジョージと付き合い始めたのはよくわかったわ。」

 「ジョージから告白してくれたんでしょ? 自信持ちなさいよ!」

 「素敵な夏休みも過ごせたのに、なにが不安なの?」


は、彼女達に囲まれて困惑している様子。

彼女達はにアドバイスをしたいのだろうけれど。

どうもの悩みの原因がわからず、考えあぐねているようす。


 「だって・・・ジョージが私のことを・・・」

 「「「私のことを?」」」

 「好きって言ってくれたのは、一回きりだから・・・」

 「「「・・・はぁ〜。」」」


ようやく話したその原因に、彼女達は顔を見合わせて溜息をついた。

僕はふき出しそうになるのを押えるのが精一杯だった。



そんなことで、は落ち込んでいたのか。



そんなこと・・・いや、にとってはオオゴトに違いない。

でも、確かに言われてみればそうだった。

僕は後にも先にも、に「好き」という言葉を言ったのは、

告白をしたそのときだけ。

抱きしめれば、そのオモイは伝わると思っていたから・・・。


 「!」


僕は岩陰から飛び出して、の手を引く。


 「箒に、乗って!」

 「え? ジョージ、練習は?」

 「練習よりも、こっちのほうが大事だから!」


少し驚いた、でも嬉しそうなを、箒にのせて空へと飛び上がる。

はいつものように、僕の腰にゆるく腕をまわす。

背中越しに伝わる、の温もりが、嬉しい。

眼下では、先ほどまでの相談(?)に乗っていた彼女達が、

手をふりながら僕たちを祝福している。


 「

 「なぁに?」

 「僕はいつだって、が好きだよ。」


ゆっくりと飛行しながら、僕のオモイをに伝える。

腰にまわるの腕が、ギュッと一瞬だけ強くなった。


愛の言葉を伝えるのは、正直苦手で。

そのかわりじゃないけれど、をいっぱい抱きしめている。

君の温もりを感じられる、この距離が好きだから。

抱きしめあうだけで、僕も、も、強くなれる気がするから。


どうか、僕の腕の中で、君が幸せであってほしい。






END

あとがき


『Happy summer time』の続編です。
楽しい毎日が過ぎ、日常に戻ったとき。
急に不安に襲われたことがあって。
それをヒントにしてみました。
もちろん大好きな某歌も入れてます♪

夢是美的管理人nao