あきらめたはずなのに。

終わった恋のはずなのに。

君の潤んだ瞳が、無理につくった微笑が、

それを後悔させる。



Rainy Girl





ビンズ先生の話が、子守唄のように聞こえる魔法史。

教室の外は雨。


 「ジョージのことは、好きよ。でもそれは・・・友達としてで。
   ごめんね、私、好きな人がいるから。」


ここぞと決めて告白したのに、あっけなく玉砕。

の言葉が僕を絶望の淵へと落とし込む。

あれはそう、2ヶ月前の、今日みたいに小雨が降る日だった。

今でもを見かけると、胸が少しだけ痛む。

あの笑顔を、僕だけのものにしたかったから。



窓際の席からは、中庭が見渡せる。

晴れていれば噴水で小鳥が水浴びをしているころだというのに。

水がめを持つ女神も、心なしか寂しそう。。。


と、その時。

いつもの中庭の風景に、見慣れた人影が現れた。

ローブを着ているけれど、フードは被っていない。

あの髪の長さ・・・

らしき人影は、空を見上げ、中庭にたたずんでいる。


なにか、あったのか?


のんきに頬づえをついてなんかいられない。

彼女の元へ

の元へ

一刻も早く行きたくなる。

荷物をまとめ、ガタンと立ち上がると、隣で居眠りしていた

フレッドが何事かと顔を上げる。


 「体調が悪いので医務室に行ってきます。」
 「はいはい、お大事に。」


先生は黒板をむいたまま、コチラを見ることなく授業を続ける。


 「ジョージ、どうかしたのか?」


状況を理解できないフレッドに、あとで説明するとだけ言って、

僕は教室を抜け出した。



 * * *



医務室からタオルを拝借し、中庭へと続く階段を駆け下りる。

雨は霧雨になっていた。

中庭にたたずんでいたのは、やっぱりだった。


 「どうしたの? ジョージ。」


濡れた顔で微笑む

雨のせいだけじゃない。

君は、泣いて、いたんだね。


 「こそ。風邪、ひくよ?」


廊下にあるベンチを指差し、移動しないかと声をかけた。

そっと肩を抱き寄せたかったけれど、躊躇する。

伸ばした手が、ふれそうで、ふれられない。

あきらめたはずのへのオモイが、あふれそうで。



ベンチに腰をかけたは、うつむいていて。

その前髪から、雫が滴り落ちる。


 「髪、拭いてあげるよ。」


漆黒でストレート、シルクのように艶やかな、の髪。

コクリとうなずいた君の髪を、そっとすくう。

タオルで、やさしく包み込む。

 
 「ジョージは、やさしいよね。」


ぽつりとつぶやくの声が、少し震えているけれど。

それには気がつかないフリをする。

フレッドと間違えることなく、僕だとわかってくれるのに。

僕の気持ちは、君には受け入れてもらえないから。


 「がやさしいから、だよ。」

 「どうなんだろ・・・わからないよ。」


振り向いたの瞳には、涙。

困ったようなその笑顔がぎこちないのは、

君が、無理に微笑んでいるから。



と付き合い始めたアイツのこと、色々耳に入ってくるんだ。

いい話も、悪い話も。

でも、が選んだヤツだから。

本気で君が選んだヒトだから。



なのに。

の肩が、震えている。

もう、気づかないフリなんて、していられないよ。



 「泣きたくなったら、胸くらい貸すから。」

 「ジョージ・・・」

 「辛いときは、頼っておくれよ。。」



あきらめた恋だけど。

無駄な足掻きかもしれないけれど。

すこしでも、君のそばにいたいから。


雨の中

泣いている君を

もう、見たくないから。。。



END

あとがき


バイト終わり、傘を持っていないのに(忘れただけ)、雨がどしゃ降りで。
ふと大好きな曲を思い出して、その勢いでつくってみました♪ 夢是美的管理人nao