追いかけて

追いかけて

私を、つかまえて・・・。



Catch me if you can.





 「甘いわよ、フレッド! それでビーターが務まると?」


の金切り声が、グラウンドに響き渡る。

同時に、ビュンと大きな音をたて、ブラッジャーが僕の頬スレスレに飛んでいく。


 「おいフレッド、おまえなにかやらかしたのか?」


スイっと近寄ったジョージが耳打ちする。

ああ、まただ。

なにかをやらかしたわけじゃない。

なにもできないでいただけなんだ。



僕はその理由がわかっている。

ぼんやりしていたのは、僕。

そうさせたのは、




 「やる気あるの? ないの??」


二つ年上の

正ビーターを努める彼女は、いわば新人である僕らの教育係り。

そして。

今、グラウンドにいるのは、僕とだけ。

居残り練習だというのに、僕にとっては、胸躍る時間。

なぜって?

と、ふたりきり、だぞ?


 「やる気、あるよ。、だから教えてよ。」


箒を片手にコチラを振り向いたに、真剣にたずねる。

まだ答えをもらっていないから。

この前の居残りのときに、聞いた、その答えを。


 『、好きな奴いるのか?』


はその問に、答えてくれない。

おかげで僕は、眠れない毎日。

練習時間だって、気がつけばを目で追ってしまう。


ぼんやりしてしまうのは、のせい。


僕はクィディッチが嫌いでも、苦手でもない。

本気になれば簡単にブラッジャーだって打ち返す事だってできる。

ただ。

の答えが気になって・・・。

夕日を背に、の浮かばない表情がぼんやりと見える。


 「好きになりかけている人は・・・いる。」


視線をはずすの答えに、僕はまるで後頭部を鈍器で殴られた

ような衝撃をうけた。


 「誰だよ! そいつ、誰なんだよ!!」
 「ちょっと、フレッド・・・」
 「僕は! 僕は・・・が。」


思わず声が荒くなる。

肩で息をしているのが、自分でもわかる。

でも、もう、言わずにはいられない。


 「僕は、のことが、好きなんだ。」


言っちまった。

恥ずかしすぎる。

の顔が・・・見れない。

箒を握りしめ、僕はその目をギュッとつむった。

とその時、


 「私を捕まえて。そうしたら・・教えてあげる。」


のやわらかな声が、僕の耳に響きわたる。

瞬間、ふわりと風が起こった。

目を開ければ、の姿はそこにはなくて。

遠く空中にあった。



捕まえる。

捕まえてみせる。

箒にまたがり、の後を追う。



追いついたと思ったのに、さっとかわされて。

捕まえたと思ったのに、するりと僕の手を抜ける。



くるりくるりと、旋回と上昇、そして下降を繰りかえす僕たち。

気がつけば、遥か彼方、地平線の上に、星が輝きはじめた。



もう、待てない。

こんな愚行はもう終わりだ。

僕はこれでもかと本気でに接近する。

箒に足を絡め、併走するを横から抱きしめた。


 「捕まえた。」


僕の言葉に、はくすりと笑う。


 「そんなフレッドが、好きよ。」


やっと聞けた、の答え。

そして僕は、君にささやく。


 「、もう離さないよ。」




END


あとがき



映画版不死鳥の騎士団では、クィディッチシーンが・・・。
その不満から、妄想爆発です。ええ、ふたりで居残りしたいデス♪
夢是美的管理人nao