おはよう
今日も君にとって、素敵な一日になりますように。
Good Morning to You
お砂糖をたっぷり入れたミルクティー。
こくりと音をたて、喉をつたっていく。
パリパリのクロワッサンに、マーマレード。
ぱくりと口に放り込む。
「ああ~、幸せ!」
休日明けの、月曜日。
ちょっと憂鬱な気分になりそうだけれど。
美味しい朝食で、簡単に幸せになれちゃう。
「おはよ、ナナ。朝からよく食うなぁ。」
「おはよう、ナナ。今朝もクロワッサン?」
同じ顔をした双子が、正面にどかっと座る。
フレッドは手にしたトーストにバターを塗りはじめ、
ジョージはカボチャジュースを一飲みした。
「だって、このクロワッサン。美味しいんだもの。」
サックサクの歯ざわり、なのに口のなかでやさしくほどけちゃう。
バターの香りとバニラの香りがふんわりと交差して。
いくつでも食べたいくらい!
「でもな、ナナ。クロワッサンは太るぞ?」
「そうそう! タダでさえカロリーが高いっていうのに」
「あ~ぁ、またそんなにジャムをつけて」
「いったい何個目だい?」
うぐっ!!
聞かれたくない質問だった。
「・・・よ、4個目」
「「4個~~!?」」
たしかに・・・食べすぎだと思う。
フレッドが咥えていたトーストは、ちゃぷんと音をたて、
カフェオレのなかにダイビング。
ジョージは、握っていたフォークを、派手な音とともに落とした。
「ナナ、クロワッサンが美味しいのは、わかったから」
「ナナが、クロワッサンを好きなのは、わかったから」
「「これからの朝食は、必ず僕らと一緒にたべて!!」」
* * *
「「おはよう、ナナ!」」
「おはよう、フレッド。おはよう、ジョージ。」
あれから毎朝、談話室で待ち合わせ。
今日はどんな悪戯をするとか、ゾンコの新商品はイカすとか、
たわいもない話を聞きながら、3人で大広間へと移動する。
右にフレッド、左にジョージ。
二人に挟まれてテーブルにつくのも、さすがに慣れたかも。
一つ年上のウィーズリー家の双子。
クィディッチの試合でブラッジャーを打ち返す2人は、私の学年でも大人気!
みんなは、羨ましいっていうけれど。。。
「さぁ、ナナ。まずはヨーグルト」
「今朝は、カボチャジュースと、ナッツのベーグルだな」
フレッドがお皿にベーグルを乗せ、ジョージはヨーグルトをボウルに入れて、
ほとんど同時に、私の目の前に置いた。
「ジョージ。私、パン・ドゥミが食べたいなぁ~」
「だーめ。」
「フレッド。私、チーズとハムを挟んで食べたいなぁ~」
「だーめ。」
「いじわる!!」
2人とも同じような顔をして、私をあしらう。
彼らはまるで専属栄養士。
毎朝毎朝、朝食のメニューをチェックして、私が食べるものを決める。
「ナナ。これは君のためなんだよ? さ、フルーツだよ。」
「う・・うん。」
「バランスよく朝食を食べて、素敵なレディーになろうよ」
「はい」
なにかと一つ下の私を気にかけてくれて。
お兄さんがいたら、きっとこんなカンジなんだろうな・・・。
それに彼らの朝食指導のおかげなのか。
クロワッサン効果で、ちょっぴりぽっちゃりしていた私の顔も、
以前と同じくらい、それ以上にほっそりとした顔に戻っていた。
なのに。
そういっているそばで、2人はおいしそうにクロワッサンを
頬張りはじめた。
「ど、どうして~~!」
「ナナ、僕らは食べ盛りなんだよ。しかしコレ、めちゃウマ!」
「そうそう! 男はすぐに腹が減る。ほんと、ハマるよなぁ。」
おいしそうにクロワッサンを頬ばるふたり。
それはそれは幸せそうで。
「ふたりとも、それで何個目?」
意地悪く、質問してみる。
「3個目だけど?」
「僕らは6個まで大丈夫!」
「ナナの分まで食べてあげるから」
「安心おしよ!」
ハムとレタスをクロワッサンに挟む、嬉しそうなフレッド。
カボチャジュースを飲み干して、ニッコリ笑うジョージ。
こんなふたりに囲まれた、いつもの朝の時間。
うん、悪くないかも。
「今日も一日、楽しくなりそうね!」
END