それとも必然だったのか。
僕は必然だったと、信じている。
Book Mark
その日は、なんとなく悪戯をしたい衝動にかられないままで。
「フレッド、もしやと思うが、恋わずらいかい?」
「おおっとそいつは知らなかった。で、お相手は?」
からかうジョージとリーに糞爆弾を押し付けて、僕は図書館へと向かった。
僕らしくない?
いやいや、そんなことはない。
ここの図書館は、フローリシュ・アンド・ブロッツ書店がいったい幾つ入るだろう。
なにせ蔵書数が半端じゃない。
悪戯商品開発の参考になる本だって、かなりある。
それだけじゃない。クィディッチ専門誌「ラブ・クィディッチ」だって、
創刊号から最新号まで、しっかりそろっている。
まぁ、だからといって、今日は読書の気分じゃなくて。
なんとなく。
そう、ただなんとなく図書館へと足が向いただけで。
図書館の手前に広がる中庭を通り抜けようと、なんともなしにふと見上げた頭上から、
ひらひらと、ゆっくりと、なにかがふってきた。
左手をひろげると、ふわりとそれが舞い降りた。
細長く、透明な何かのなかに、花のようなものが挟まれている。
白いこの花は・・・なに?
上部の穴が開いた部分には、赤いリボンがつけられて
「ああ、ブックマークか」
それが何かを理解したものの、なぜ空から降ってきたのか・・・。
不思議に思いつつ、ブックマークを冬の太陽にかざしながら、中庭を横切ると、
なんの前触れもなく後方に風が起こった。
ふりむけば、箒にまたがった女子生徒が丁度降り立ったところで。
「あれーー? このあたりだと思ったのに。」
きょろきょろと、箒片手に地面舐めるように見つめながら、なにやら探している様子。
おいおい。
ローブをまとわず、制服姿でその姿勢は・・・その、正常な男子生徒にとっては、
たまらないアングル。
「かわいい苺のお嬢さん、なにかお探しですか?」
あえて紳士に、そっと近づいて、僕のローブで彼女を覆う。
ふと上げたその顔が、ほんのり赤くなる。
「み、見えてた?」
「ああ、食べごろ苺がバッチリ。、ごちそうさま!」
「・・・!!」
彼女の顔は、これ以上ないくらい赤くなって、それがまたキュートで。
僕の心拍数が一気に上昇する。
教室の片隅で、いつも本ばかり見つめているが、こんなに可愛い顔をするなんて。
声をかけたこっちまで、顔が赤くなるのがわかる。
「フレッド、あなたの顔、苺みたいよ?」
搾り出すような、の可愛い声が聞こえる。
「それ、お互い様じゃないかい?」
照れながらも、の手をとり立ち上がる。
左手に持っていたブックマークを渡しつつ図書館へ向かう。
「この花は?」
「苺。花言葉、知っている?」
「まさか!」
やっぱりね、といった表情で、はブックマークに目を落とす。
図書館についたら、僕はまっさきに花言葉を調べるだろう。
そして、カウンターに座るに声をかける。
この気持ちが、嘘じゃないと確かめたいから。
の気持ちが、同じものだと確かめたいから。
のブックマークが、僕に舞い降りてきた。
その偶然が、必然だったと思うから。
END