その言葉は、あたりまえのようによく耳にする言葉。
なのに、が口にするだけで魔法の言葉になる。
それが僕をどれだけ勇気付けていることか。
君は知っているかい?
Magic Words
今学期最後のクィディッチ対抗戦。
前回、レイブンクローに大差で勝ったグリフィンドール。
調子は上々。
波に乗ったまま、今日の決勝戦を迎えた。
チームの状態も悪くない。
ハリーもシーカーとしてだいぶ板についてきた。
鉄壁のオリバーに得点王アンジェリーナ、なにより僕とフレッドの人間ブラッジャーが
いるというのも大事な勝因、怖いものナシのハズ・・・だった。
今学期の対抗戦開始早々、マルフォイ家のバックアップが入ったスリザリンは、
お家芸とも言うべき卑怯な手段をつかい、フィールドをめちゃくちゃにした。
あの手この手で試合を妨害、天候不順と言いがかりをつけ棄権し、競合相手を
落としいれ、気がつけば僅差で首位に立っている。
こんなチームに、優勝杯は似合わない。
試合前の更衣室。
今まさにフィールドへ向かおうとする、我らがグリフィンドールチーム。
「スリザリンの奴ら、どこまで性格がひねくれているんだ。」
箒のメンテナンスに余念のないアンジェリーナの隣で、フレッドがつぶやく。
前回の対抗戦で、スリザリンのビーターにまんまと落とされた。
どうやらまだ、あのときの悔しさをひきずっているようだ。
「さぁ、みんな 時間だ。」
キャプテンのオリバーが、選手の召集をかける。
いつものごとく、テンションのあがったオリバーは鼻が赤い。
「フォーメーションは、いつものとおり。作戦はH−B−Cで行く。
なんにせよコッチには名選手が揃っている! 今回は天候にも恵まれた。
今日は負けられない。必ずや、クィディッチ・カップを我が寮に!」
『グリフィンドールに!!』
掛け声も勇ましく、まずはアンジェリーナがフィールドへ向かう。
彼女を追って、フレッドも飛び立つ。
「ジョージ、あのぉ。。。」
聞き覚えのある声に振り返ると、応援席にいるはずの、がいた。
「、どうしてここに?」
1人、また1人と、フィールドへウォーミングアップに向かう中、
僕は箒を立てかけ、に近づく。
このところ、オリバーの方針で朝練がつづいていた。
とくに昨日と今日は決勝に備え、早朝練習。
食事の時間さえも練習にと、朝食は屋敷しもべがグラウンドに届けてくれた。
今の今まで、起きてから一度もには会ってはいなかった。
しかも試合のある日なのに。
あ・・・よく考えたら、こんなこと、初めてだ。
そうさ、試合のある朝、談話室へいくとがいた。
暖炉の前のソファーに座り、本を読んでいることが多かった。
階段を下りてきた僕に気づくと本を閉じ、手をふりながら、いつもの挨拶。
「おはよう、ジョージ! 調子はどう?」
「おはよう、。今日の試合はまかせとけ!」
「がんばってね! 応援しているから。」
二言三言、ほんの短いやり取り。
あたりまえのように感じていたけれど、は必ず、僕を見送ってくれた。
そんなとの朝の時間が、僕は楽しみだった。
そう、は必ず、僕を勇気づける言葉をかけてくれたから。
「朝からずっと会えなくて、伝えられなかったけれど・・・」
うつむくは、耳まで赤い。
いつもと調子が違うに、僕の鼓動は早くなる。
「が、がんばって! 応援しているから。」
すこし心配そうな、でもとっておきの笑顔と共に、いつもの言葉。
。
大好きな。
ねぇ、知っているかい?
の言葉が、どれだけ僕を勇気付けていることか。
「ありがとう、。精一杯がんばるよ!」
好きといえないかわりに、思いを込めた笑顔を君に。
刹那、僕の唇にあたたかいマシュマロが触れた。
いや、違う。
の唇だ!!
「・・っん!?」
頭が真っ白になる。
が 僕に キスをした!?
「ジョージ! 早くフィールドに出るんだ!!」
呆然とする僕を、オリバーが引きずるようにから引き剥がす。
「! 僕・・・」
「応援してるから!!!」
の声が、僕を勇気付ける。
アジアの日本から来た。
漆黒の髪の。
僕の勝利の女神。
君のために、グリフィンドールに勝利を!!!
END